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帰省−1−
努と旅行から帰ってきた日、お姉ちゃんから電話があった。
「もしもし、拓海?」
「どうしたの?」
「もう東京着いた?」
「さっき帰ってきたよ」
「そう···。落ち着いて聞いてね」
「何?」
「···お父さんが倒れたって」
ーお父さんが倒れた···?
意味が理解できず、その後のお姉ちゃんとの会話は耳に入ってこなかった。
「拓海、聞いてる?」
努が電話を代わってくれて入院している病院の住所をメモした。
「拓海、大丈夫か?」
「···え?」
「とりあえず命に別状はないみたいだから、明日2人で病院に行こう」
「···わかった」
こんな時でも会いたくないと思う自分が恥ずかしかった。
次の日、努と一緒に新幹線で浜松へと向かった。帰るのは4年ぶりだ。病院に着くと、お母さんが待っていた。
「拓海!来てくれたのね」
寝てないのか髪がボサボサでクマがひどかった。
「お母さん···」
お母さんが隣の努に目を向けた。
「美波から話は聞いてます」
「初めまして、金子努です」
努は深々と頭を下げた。
「来てくれたところ悪いんですが、家族のことなので会うのはご遠慮ください」
「何で···そんなこと言うの?」
まるで邪魔者みたいに扱う言葉に腹がたった。
「いいんだよ、拓海」
努が腕を掴んだ。
「でも···」
「家族の邪魔をするつもりはありません。お父様が早く回復されることを願ってます」
そう言って近くのカフェに向かった。
「行きましょ、拓海」
努の後を追いたかったが、努の気持ちを優先した。
「···うん」
病室に入ると、お父さんが寝ていた。お母さんの話では早期の肺がんで手術をするか薬物治療にするか決めなくてはいけないらしい。
「拓海が大学に入ってから、また煙草を吸い始めてね···。どんどん本数が多くなってったの」
「全然知らなかった···」
「きっとお父さんなりに拓海のこと悩んでたのよ」
「···それって僕が原因ってこと?」
「そんなこと言ってないでしょ」
またこうやって口論になると思ってたら、お姉ちゃんがタイミングよく来てくれた。
「あ、お母さん、拓海」
「美波、陽菜ちゃんは大丈夫?」
「うん、順平さんが有給取って見てくれるって」
「それなら安心ね」
「お父さんはどう?」
「今は落ち着いてる」
思わぬ形で久しぶりに家族4人が揃った。
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