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お母さんとお姉ちゃんの飲み物を買って病室に戻ると、お父さんが目を覚ましていた。
「お父さん、拓海だよ」
「···心配かけて悪かったな」
こんな弱々しい姿を見るのは初めてだった。
「···体調どう?」
「···今は大丈夫だ。1人で来たのか?」
「ううん、大切な人と一緒に来た」
ここしかないと思って覚悟を決めて言った。
「そうか···。会わせてくれないか?」
意外な答えに、みんな驚きを隠せなかった。
スマホを取り出して努にメッセージを送った。
しばらくして、努が病室に入ってきた。
「お父さん、僕の恋人の努です」
「初めまして、金子努です」
不安と緊張からか自然と手を繋いでいた。
お父さんは驚いた顔一つせず、もっと近くに来るよう手招きした。
「努くん···ありがとう」
「俺は何も···」
「君がいなかったら、拓海とこうして会えなかっただろう。私は···拓海がゲイだと分かったとき、拓海の気持ちを考えずに体裁ばかり気にしていた。でも、それは間違ってるって気付いたんだ」
僕の手をしわが増えた手で包んだ。
「息子の幸せを願わない親なんていないよ···。今まで本当にすまなかった」
お父さんの顔を見ると泣いてしまいそうで、努の方を見ると努が泣いていた。
「何で努が泣いてんの?」
「いや···よかったなって思って」
「うん」
涙が溢れ出し、ハンカチを取り出そうとしたとき、お父さんが太い指で涙を拭ってくれた。
「ほんと、拓海は昔から泣き虫だな」
そう言うお父さんも目が潤んでいた。
「さっきはひどいこと言ってごめんなさいね···」
そう言ってお母さんが努に頭を下げた。
努は何も言わずに首を横に振った。
お父さんは胸のしこりが取れたみたいにスッキリした顔をしていた。窓から夕日が差し込んでいた。
「早く元気になって、みんなでご飯食べよう」
お父さんに笑いかけた。
「お母さんのカレー久々に食べたいなぁ」
お姉ちゃんが提案に乗ってきた。
「普通のカレーだから期待しないでね」
お母さんが恥ずかしそうに努に言った。
「楽しみにしてます!」
努は目を輝かせていた。
「お母さん覚悟した方がいいよ」
そう言ってみんなで笑った。
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