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「拓海くん、よく来たね」
「お邪魔してます」
「さっき美味しそうなあんみつ頂いたの」
母さんが紙袋の中を父さんに見せた。
「気を遣わせてすまないね」
「いえいえ、とんでもないです」
「夕飯の後にみんなで食べましょ」
テーブルには豚の角煮と唐揚げが並んでいた。
拓海は量の多さにびっくりしていた。
「口に合うといいんだけど」
母さんが心配そうに拓海に聞いた。
「美味しいです!あとでレシピ教えて下さい」
「よかった!後で教えるわね」
「ありがとうございます」
2人が仲良さそうに話してるのを見て安心した。
夕飯後、父さんに誘われて晩酌することになった。
お気に入りの芋焼酎で乾杯した。
「拓海さんは努兄のどこが好きなの?」
優が急に口を開いた。
「優しいところ、かな」
照れてる拓海を見て顔が熱くなった。
「ふーん。高校の時、その優しさを勘違いした女子から努兄のことよく聞かれたわ」
「そんな話聞いたことないけど」
「だって努兄、バスケにしか興味なかったじゃん」
「確かに」
女子から告白されたとしても、高校生の俺だったら間違いなくバスケを優先してただろう。
「将来のことは考えてるのか?」
父さんが真剣な顔で聞いてきた。
「ちょっとお父さん、その話は後でも···」
母さんが止めようとしたがだめだった。
「よくない。拓海くんとは真剣なんだろ?」
「もちろん」
「なら先のことも考えるべきだ」
「それはそうだけど···」
「帰省中に答えが出なかったら、申し訳ないが、私は2人の交際には反対だ」
父さんの有無を言わさない空気に沈黙が続いた。
拓海は俯いて泣きそうな顔をしていた。
「···あんみつ食べましょ」
母さんが立ち上がった。
「いらない」
拓海の手を引いて部屋に戻った。
「なんであんなこと言うんだよ」
「お父さんにはお父さんの考えがあるんだと思う」
「考え?考えって何?」
拓海に八つ当たりしてしまった。
「···ごめん」
「お父さんに納得してもらえるように、ちゃんと将来のこと話し合おう」
そう言って優しく抱きしめてくれた。
「もっと元気づけて」
頭を拓海の肩に乗せた。
「甘えん坊だなぁ。じゃあ努の好きなとこ挙げてくからちゃんと聞いててね」
「うん、分かった」
「···やっぱやめた」
「なんで?」
「挙げたらキリがないから」
そう言うとおでこにキスをした。
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