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同期−1−

GWが明けて、体を仕事モードに戻すのに思いのほか時間がかかった。 やっと慣れ始めたころ、一緒に取引先を回っていた同期の橋本が休みがちになった。橋本は真面目な性格で同期飲みをしたときも1人だけ1次会で帰った。 口数は少ないが、人見知りという感じではない。 先輩曰く、GW明けに仕事についていけなくて辞める新入社員が何人かいるらしい。 「今度橋本が来たら、話聞いてくんない?」 「俺がですか?」 「先輩が話聞くって言っても話さないだろ」 「それはそうですけど···」 「じゃ頼んだ」 面倒なことになったな、と思いつつも橋本のことが心配だった。 翌日、出勤すると橋本がいた。 どう話を切り出そうか悩んでいると、橋本から仕事終わりに話がしたいと言われた。 仕事が終わって拓海に同期と飲みに行く、とメッセージを送った。飲みすぎないでね、という文と一緒に寂しそうなスタンプが送られてきた。 会社近くの居酒屋に入り、お酒とおつまみを適当に頼んだ。ビールが来ると、乾杯をする前に橋本が一気に飲み干した。呆気にとられていると、橋本が口を開いた。 「僕、男が好きなんだ」 「そ、そうなんだ」 「引かないの?」 「引くも何も···俺、男と付き合ってる」 「え!」 店内に響き渡る大声で橋本が驚いた。 他のお客さんの視線が注がれて、すみませんと頭を下げた。 「金子もゲイなの···?」 「俺はノンケだと思ってたけど、好きになった人が男だったっていう感じ」 困惑した表情で橋本は枝豆を食べた。 「そんなことあるんだ···」 話が逸れたので、本題に戻した。 「仕事休んでるのと関係あるの?」 「実は···土屋先輩のことが好きなんだ」 土屋先輩は一緒に取引先を回ってる2歳上の先輩だ。 「土屋先輩って確か···結婚してるよね?」 左手の薬指に指輪をはめてるのを思い出した。 「うん···。仕事で顔を合わせると、先輩のことが好きなのに指輪が目に入って辛いんだよ···」 二杯目のビールも一気に飲み干した。 「だから休んでたのか···」 拓海にもし相手がいて、それでも拓海のことが好きになったら、と考えると胸が締め付けられた。 「どうしたらいいんだろ···」 橋本の声が震えていた。 「どうすればいいんだろうな···」 気の利いた言葉もかけられず、ただただ一緒にいることしかできなかった。

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