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出張−1−
梅雨が明けて猛暑がやってきた。クールビズで半袖のポロシャツに衣替えしたが、日差しが容赦なく肌を刺した。
明日から名古屋に出張なので、荷造りを拓海に手伝ってもらっていた。
「暑いから気をつけてね」
そう言って冷感タオルをくれた。
「うん、ありがとう」
「いつ帰ってくるんだっけ?」
「1ヶ月後かな。寂しい?」
拓海は頷いて抱きついた。
「寂しいに決まってるじゃん···」
冷房が効いた部屋で拓海の体温が心地よかった。
「俺も寂しい」
おでこにキスをしてスーツケースを閉めた。
「抱いていい?」
「聞かなくてもわかってるくせに」
今度は唇にキスをした。
翌朝、拓海は俺より早く起きていた。
「はい、これ」
弁当箱を渡された。
「作ってくれたのか?」
「うん、新幹線で食べてね」
「ありがとう」
「卵焼きも入れておいたから」
1ヶ月会えないと思うと泣きそうになった。
顔を見られないように拓海を抱きしめた。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
新幹線は土屋先輩が隣の席だった。あれから橋本とは仲良くやってるらしい。
「そろそろ昼飯食べようか」
「そうですね」
弁当箱を開けると、卵焼きと唐揚げが入っていた。
初めて拓海からもらった弁当を思い出した。
「美味そうだなー。彼氏の手作り?」
「そうです。料理上手なんで」
「香輝は···あ、橋本も料理上手いんだよ」
「橋本のこと下の名前で呼んでるんですね」
「誰にも言うなよ」
先輩は顔を真っ赤にして駅弁を食べ始めた。
弁当は相変わらず最高に美味しかった。
名古屋駅に着いて近くのビジネスホテルにチェックインした。スーツケースに詰め込んだ荷物を出して拓海にホテルに着いた、とメッセージを送った。
夜は名古屋の営業所の人と飲むことになっていたので、それまでホテルでゆっくりすることにした。
飲み会の時間が近づき、準備をしているときに拓海から電話がかかってきた。
「もしもし」
「これから出かけるところ?」
「営業所の人と飲み会」
「そうなんだ。飲み過ぎないでよ」
「分かってるって。拓海は仕事終わり?」
「うん、これから帰るとこ」
「お疲れ様。そろそろ行かないと」
「ありがとう。気をつけてね」
「うん。拓海好きだよ」
「僕も大好き」
電話を切ると扉をノックする音が聞こえた。
扉を開けると土屋先輩がいた。
「行けそうか?」
「大丈夫です」
外に出ると湿った暑さが体にまとわりついた。
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