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土屋先輩と店に向かうと、名古屋の営業所の人と思われる三人組がいた。2人は40代くらいの男性で、
1人は同い年くらいの女性だった。
「お待たせしました」
先輩が声をかけた。
「東京営業所の土屋さんと金子さんですか?」
「そうです」
「お会いできて嬉しいです!さ、中入りましょう」
店内は思ったより広く、地元のお客さんで賑わっていた。どのお客さんも手羽先を頼んでいた。
「ここは手羽先が有名なお店なんです」
「だからみんな頼んでるんですね」
「とりあえず生と手羽先注文していいですか?」
「はい、お願いします」
乾杯をしたあと簡単な自己紹介をした。女性は俺の
1こ上で佐々木玲奈という名前だった。薄化粧でも
美人だと分かる整った顔をしていた。
「営業は女性が私だけしかいなくて」
手羽先の骨を器用に外して食べていた。
「大変なこと多いんじゃないですか?」
「全然。女性が多い職場は息が詰まるし」
顔に似合わず豪快な飲みっぷりだった。
「営業の成績も常にトップなんだよ」
俺の向かいに座る眼鏡の鈴木さんが教えてくれた。
「女使って契約取ってるって裏で言ってた人いたけど、私より契約取ってから言えよって感じ」
笑顔でかなり辛辣なことを言っていた。
「佐々木くんがいないと戦力半減だから」
そう言って体格のいい斎藤さんが笑った。
「斎藤さん、半減どころじゃないですから」
玲奈さんがそう言うとみんなで笑った。
話が盛り上がり、結局ラストオーダーの時間まで飲んでしまった。先輩はかなり出来上がっていた。
「先輩、帰りますよ」
「まだ飲みたい」
「わがまま言わないでください」
「帰りたくない」
一向に動こうとしないので、耳元で橋本の名前を出すと先輩は立ち上がった。左側を支えながら歩き出すと、さっき解散したはずの玲奈さんが手伝ってくれた。
「玲奈さん、帰ったはずじゃ···」
「ホテルまで運ぶの手伝うよ」
「ありがとうございます」
先輩は寝息を立てていて体重が肩にのしかかった。
「土屋さんっていつもこうなの?」
「いや、こんな姿初めて見ました」
「そうなんだ」
夜になっても気温が下がらず、ホテルに着く頃には2人とも汗だくだった。先輩を部屋のベッドに寝かせて自分の部屋に戻った。
「汗かいたからシャワー借りてもいい?」
「どうぞ」
シャワーから出た玲奈さんはバスタオル一枚という格好だった。
「ちょ、ちょっと···」
目をそらすと隣に座って太ももを触ってきた。
「可愛い反応だね。努くんってもしかして童貞?」
「ち、違いますけど···」
「へー意外とやることはやってるんだ」
かきあげた髪からシャンプーのいい香りがした。
「僕、シャワー浴びるんで帰ってください」
立ち上がろうとすると、腕を掴まれた。
「欲しいものは手に入れるタイプだから」
そう言うと玲奈さんは服を着て出ていった。
何が起きたのか分からないまま、シャワーを浴びると熱が膨らんでいるのに気付いた。
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