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翌日、昼前にお母さんと一緒に病院に向かった。
お父さんは顔色もよく調子がよさそうだった。
「お父さん」
「お、これは嬉しいサプライズだな」
「昨日いきなり家に来てびっくりしたのよ」
そう言ってお母さんが笑った。
「ごめん、驚かせて」
「会いに来てくれるのは大歓迎よ」
お父さんも頷いていた。
「お父さん、お弁当作ってきたから食べて」
お母さんが机の上に弁当箱を置いた。
「拓海も手伝ってくれたのよ」
「うん、卵焼きだけだけど」
「卵焼きでも立派な料理だよ」
そう言うと美味しそうに食べてくれた。
「努くんとは仲良くやってるのか?」
お母さんは席を外していて、病室にはお父さんと2人きりだった。
「···うん」
「その感じだと何かあったんだな。努くんと拓海の2人の問題だから、あれこれ言うつもりはないよ。ただ、自分にとって大事なものは何があっても手放したらだめだってことは覚えておいてほしい」
そう言ってお父さんは僕の手を握った。
「実は、お母さんと結婚するとき親に反対されたんだよ。でも、お父さんはお母さん以外考えられなかったから何とか説得して結婚したんだ」
「そうだったんだ」
「そんな昔の話やめてくださいよ」
いつの間にお母さんが戻ってきていた。
「たまにはいいじゃないか」
「拓海、お姉ちゃんには内緒にしてね」
「うん、わかった」
お母さんとファミレスで昼飯を食べた後、新幹線で東京に帰ることにした。
「もっとゆっくりしてけばいいのに」
「明日から仕事だから」
「仕事は慣れた?」
「うん。頼もしい上司もいるし楽しいよ」
「そう、それならよかった」
お母さんは寂しそうに笑った。
「お母さん、ありがとう」
「何かあったらいつでも帰ってらっしゃい」
「うん」
新幹線は思ったより混んでいた。席に座ってイヤホンをして努の留守電を再生してみた。
「拓海、今どこにいる?」
「玲奈さんのこと黙っててごめん···」
「部屋に来ただけで何もなかったんだよ」
「留守電聞いたら電話して。待ってるから」
「これで終わりなんて嫌だよ」
「拓海に会いたい」
「会いたいよ···」
最後の留守電は泣いていたのか声が震えていた。
出張から帰ってきたらちゃんと話したい、とメッセージを送って新幹線を降りた。
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