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東京に戻ってからは仕事も忙しく、あっという間に時間が過ぎていった。努が帰ってくる日は明日に迫っていた。
仕事終わりにスマホが鳴った。
「もしもし、峯岸だけど」
「久しぶり。どうしたの?」
「拓海くんの会社の近くまで来たから、よかったら一緒に飲みたいなーと思って」
「ちょうど仕事終わったからいいよ」
「じゃああと5分くらいで着くから待ってて」
「うん、わかった」
外は暑かったので中で峯岸を待つことにした。
待っていると大森さんが通りかかった。
「大森さん、お疲れ様です」
「高橋くん、お疲れ様。帰らないの?」
「ちょっと友達を待ってて」
「あらそう。最近少し元気ないと思ってたけど、
その様子なら大丈夫そうね」
自分では普通にしてたつもりが見抜かれていた。
「それじゃ、また来週」
「はい」
大森さんと入れ違いで峯岸が来た。
「今の人、上司?」
「うん、部長の大森さん」
「厳しそうだね」
「厳しいけど優しいよ」
「そっか。行こっか」
店は会社からすぐの焼き鳥屋にした。
華金ということもあり、仕事終わりのサラリーマンで席が埋まっていた。
とりあえずビールと串盛りを注文して、おしぼりで顔の汗を拭った。
「努は明日帰ってくるんだっけ?」
「···うん」
「努から何があったか大体聞いたよ」
「そうなんだ」
「実は僕もさ、前に似たようなことがあって」
「え?」
「実さんのこと傷つけちゃって···。その時、努に相談したら逃げるなよって言われたんだよね」
「そんなことがあったんだ」
「だから、今度は僕が努に逃げるなよって言った」
「努はなんて?」
「ちゃんと拓海くんと話し合うって言ってたよ」
「そっか」
ー努も覚悟ができたんだ
「付き合うって面倒くさいけど、それが付き合うってことなのかもね」
そう言って峯岸は砂肝を食べた。
「他人同士だからぶつかるのは当たり前か」
レバーに七味をかけて食べた。
「そうそう。ぶつかってみないと相手のことなんか分かんないし」
今度はつくねを食べていた。
「うん、今なら分かる気がする」
カリッカリに焼かれた鶏皮を食べた。
「努と拓海くんなら大丈夫だよ」
喉を鳴らしてビールを飲んだ。
「今日、話せてよかった」
半分ほど残っていたビールを飲み干した。
家に帰って、引き出しにしまっていた指輪を薬指にはめた。
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