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約束−1−
拓海が店を出た後、追いかけようとしたら玲奈さんに腕を掴まれた。
「私を置いてくつもり?」
「離してください」
「部屋に行ったこと彼に話したから」
「え?」
「可哀想に。すごく動揺してた」
「何でそんなこと···」
「恋人に言わなかったあなたも同罪よ」
玲奈さんの手を振りほどき、駅に全速力で走った。
どれだけ探しても拓海はいなかった。
電話も一向に繋がらず、もう会えないかもと思ってたときに拓海からちゃんと話したい、というメッセージが来て涙がとめどなく溢れた。
それから2週間、忙しさに追われあっという間に東京に戻る前日になった。荷物をまとめようとスーツケースを開けると中に手紙が入っていた。
「早く会いたい」
手紙には一言そう書いてあった。
涙を拭いながら荷物をまとめていると、扉をノックする音がした。扉を開けると玲奈さんがいた。
「何しに来たんですか?」
「そんなに警戒しないでよ」
「荷物まとめなきゃなんで」
扉を閉めようとすると足を挟んできた。
「ちょっとぐらいいいでしょ?」
「···分かりました」
玲奈さんは部屋に入ると手紙を手に取った。
「呆れるくらい仲がいいのね」
「どうしてあんなことしたんですか?」
「私ね、努くんたちが来るちょっと前に婚約破棄されたの。お互いの両親にも挨拶を済ませて、あとは結婚式を挙げるだけってときに他の女と浮気して。理由を聞いたら、結婚したら仕事を辞めて家庭に入ってほしかったって言われて···。一生懸命頑張ってきたことを否定されて、もうどうでもよくなっちゃったの。だから幸せそうな2人を見て壊したくなった」
そう言って玲奈さんは部屋を出ようとした。
考えるより先に体が動いて、腕を掴んだ。
「最低でしょ、私···」
「最低だけど、仕事においては格好いい先輩です」
「何それ···」
「1ヶ月間、お世話になりました」
掴んでた手を離して頭を下げた。
玲奈さんは黙って部屋を後にした。
荷物をなんとかまとめ終え、拓海に新幹線の時間をメッセージで送った。すぐ既読になり、了解とだけ返事が来た。
翌朝、失くさないように手紙をスマホのケースに入れて部屋を出た。純から頑張れ、というスタンプが送られてきた。
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