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花火−1−

花火大会当日、選んでくれた浴衣を着て会場に向かった。天気予報では雨が降るかもと言っていたが、気持ちのいい快晴だった。 待っていると、濃紺の浴衣を着た拓海が来た。 白い肌に濃い色が映えていて目が離せなかった。 「見過ぎだって···」 恥ずかしそうにうちわで顔を隠した。 「よく似合ってるよ」 「努も似合ってる」 お互いに顔が赤くなる。 「行こっか」 「うん」 花火が打ち上がるまで時間があったので、屋台で気になったものを買うことにした。どこもかしこも人だらけで、はぐれないように拓海の手を握った。 たこ焼きと焼きそば、それにチョコバナナも買って 座れるところに移動した。拓海は人混みに疲れたのかぐったりしていた。 「拓海、大丈夫?」 持ってきた水を渡した。 「うん、ちょっと休憩すれば大丈夫」 水が口からこぼれて、鎖骨の間に落ちた。 ハンカチで水を拭く姿は色っぽかった。 「チョコ溶けちゃうから先食べて」 そう言ってチョコバナナをくれた。 半分ほど食べると拓海が顔を見て笑った。 「チョコが口についてるよ」 「え、まじ?」 「じっとしてて」 そう言うと指で取ってくれた。 「食べ物、交換しよ」 今度は拓海がチョコバナナを頬張った。 「拓海もチョコついてるよ」 「え、どこ?」 「嘘だよ」 顔を近づけてキスをした。 「拓海の真似してみた」 「映画一緒に見たときのこと?」 「うん」 「覚えてたんだ」 「忘れるわけないじゃん」 拓海は嬉しそうに残りのチョコバナナを食べた。 「そろそろ行こっか」 人の流れが変わって花火の時間が近づいているのが わかった。手を繋いで、できるだけ人の少ない花火が見える場所に移動した。 「花火なんていつぶりだろう」 「俺も結構久しぶりかも」 「ほんとは憧れてたんだ、こういうの」 拓海の頭が肩に乗っかった。 「言ってくれればよかったのに」 「今度からはちゃんと言うようにする」 「うん。そうしてくれると助かる」 「努」 「ん?」 「連れてきてくれてありがとう」 「一緒に来てくれてありがとう」 夕日が沈み、空が暗くなり始めた。 周りの人がぼやけて2人だけの空間にいる気がした。

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