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ホテルはタイムズスクエアやセントラルパークから近く、アクセスは抜群だった。部屋は十分な広さがあり、ニューヨークの夜景を一望できた。
荷ほどきを済ませて、時差ボケ防止のために早めに寝ることにした。先に風呂を出た拓海は気持ちよさそうに寝ていた。起こさないようにそっと後ろから抱きしめて目を閉じた。
翌朝、電気ケトルの音で目が覚めた。
拓海がコーヒーを淹れて持ってきてくれた。
「おはよう」
「おはよ。いつ起きたの?」
「30分くらい前かな」
「よく眠れた?」
「うん、もうぐっすり」
「それならよかった」
窓の外には夜景とは違う街並みが広がっていた。
コーヒーを飲み干して、暖かい服に着替えた。
ホテルを出ると、東京とは違う寒さが肌を刺した。
街を歩いていると、手を繋いで歩く同性カップルを何組も見た。
「日本もこんな風に堂々と歩けたらいいのにね」
そう言うと俺の手を取ってポケットに入れた。
「いつかそうなるといいな」
手を繋いだまま、タイムズスクエアに向かった。
大きな画面に広告が次々映し出され、映画で見てた
ままの景色だった。道行く人に写真を撮ってもらい
近くのカフェで朝ごはんを食べた。
その後、うっすら雪の積もったセントラルパークを
コーヒー片手に歩いた。途中で人だかりができてて
何事かと見てみると、リスの親子が寄り添って木の実を食べていた。
「可愛いね」
「うん」
拓海は笑顔で写真を撮っていた。
その姿を写真に収めた。
昼は日本にも出店している有名なハンバーガー屋の本店で食べた。観光客だけでなく、現地の人も行列を作っていた。本場で食べるからか、より美味しく感じられた。
メトロポリタン美術館で時間を潰した後、ホテルの近くにあるピザ屋で何枚かテイクアウトして部屋で
食べた。Mサイズが日本でいうLサイズだった。
「なんか映画の中にいるみたい」
拓海が新しいビールを開けて言った。
「映画なら拓海はヒロインだね」
拓海を膝の上に座らせた。
「こんな可愛くないヒロインいないでしょ」
「俺にとっては拓海が一番可愛いけど」
恥ずかしそうに顔をそらす拓海の頬にキスをした。
「僕がヒロインなら努はヒーローだね」
「こんなしょぼいヒーローいないよ」
「僕にとっては努が一番格好いいけど」
そう言って唇に何度もキスをした。
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