13 / 66

第13話

 壁が灰色の岩でできた、空気の重い空間だった。  セイジュが眠っていた客間や、食事をした(セイジュは乾杯とシャンパンひとくちで気絶しただけだが)部屋の豪華絢爛さはどこへやら、照明は薄暗く、部屋の中央にはベッドがあるが、通常のものより高さがあり、上半身を支える部分が起き上がっている。  今、セイジュはそのベッドに横たわっている。ごくごく微量のアルコールのせいで、首や胸元までピンク色になっていて、黒いシルクのシャツとのコントラストが扇情的だった。 「セイジュ、起きろ」  ボルドーの衣服に着替えて入室してきたクロイゼンが、ベッドのセイジュにそう声を掛けた。  セイジュは少しずつ酔いが醒めるのを感じていた。当然だ、シャンパンひとくちだったのだから。 「えっ?!」  覚醒したセイジュがまた大声を上げる。   「何ですかここ、洞窟? 俺は確か食事をしに行って……」 「俺のお気に入りの部屋を洞窟呼ばわりするとは、失礼な下戸だな」 「げこ……ってなんですか」  クロイゼンは応えず、セイジュの正面に立った。   「いいか、セイジュ。これからおまえにある教育をする。期間はおまえの学習能力次第だ」 ——こんな机もない所で何を勉強するんだろう?  と、セイジュは首をひねった。    もうダーメだこいつ、貞操観念とかそういう系の知識も危機感もありゃしねぇ!

ともだちにシェアしよう!