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第19話

「ああ、そういえばセイジュ、おまえ、年齢はいくつだ?」 「十七歳です。あ、王子様は?」 「俺は、じゅうろく——」 「えー! 年下なの? 俺タメ語でいい?」 「じゅうろくまんななせんにじゅうよん歳だ」 「ごめんなさい、敬語続行で」 「いや、タメ語なる言語でも構わんぞ。何しろ我々は伴侶だ」 「は、はむっ! 伴侶!」 「そうだ。夫婦間で敬語というのは、俺は望ましいとは思えん。タメ語で話せ。これは命令だ」 『タメ語』を『命令』してくる時点で完全に主従関係が見え見えだが、まあここは流そう。 「でも勇気いり、いるよ、王子様。だって王子なんだもん。俺、農民だし、人間だし……」 「それ以前にセイジュ、おまえ、いい加減俺の名を覚えろ! フルネームが長い自覚はあるから、せめてクロイゼンと呼べ! さもなくば——」  セイジュは少し頬を紅潮させ、 「く、くろい、ぜ……」  ともごもご発声した。 「おまえふざけているのか? もし言えなかったら——」  その次の瞬間、来客を意味する音が鳴った。 「クロイゼン様、セイジュ様〜! お食事をお持ちいたしました〜!」  満面の笑みを浮かべて食事を運んできたのは、ろくろ首の女性料理長であった。

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