38 / 66

第38話

——なんでだろう……?  セイジュは魔法で施錠された部屋のベッドに転がって考えていた。 「クロイゼン……」  うわごとのように呟いてみる。 ——クロイゼンだって男の子なんだから、イキたいに決まってるよね、でもなんで俺があれしたら嫌がるんだろう?  そして思い出す。  あの悦び。  自分の与えるもので、クロイゼンが快感を覚えること、気持ちよくなること、自分を感じてくれること……。    クロイゼンは、セイジュにはよく理解できなかったが、『一方通行』だとか何とか言っていた。それは一体何の話だ? ——俺が言うこと聞かなかったせいで、怒ったのかな……  そう思うと、胸の奥に何かチクリと棘のようなものが刺さった気がした。何だろう、と考える前に、こんな思考も浮かんだ。 ——クロイゼンに嫌われたらどうしよう? 「い、嫌、かも……」  思わず声が漏れた。  しかし、この童貞こじらせ恋愛経験ZEROボーイ・セイジュは、自分自身の感情が何を意味しているのか、全く分かっていなかった。

ともだちにシェアしよう!