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第55話:無慈悲

——今のは……誰が誰を撃ったんだ?!  何も見えないもどかしさに忸怩たる思いを抱えながら、それでもセイジュは祈るしかなかった。 「アヴィ……おまえ……」  クロイゼンの震える声がした。 「よう、シクロ。そういやおまえも堕天使だったな。今ならおまえがどうして堕天したかよーく分かる気がするぜ。あと、そこでさかってる黒髪のストーカー堕天使さんよ」 「アヴィ! 喋るな!」 「あんたのことは当局に洗いざらい報告したぜ、堕天使の管理局にな。これだけのことをしたんだ、仮にここで俺かクロイゼンに殺されなくても、あんたはどっちみち自由じゃなくなる。覚悟しとけよ?」 「もういいアヴィ! 黙って横になれ!」 「ああ、クロイゼン。悪ぃな、最後まで付き合いきれなくて。王冠をかぶったおまえを見るのが夢だったが——」 「黙れ! クソッ! なぜ治癒魔法が効かない?!」 「クロイゼン、俺も最初から嫌〜な予感がしてたんだよ。あの時あの鬼が現れた瞬間からな」 「だから喋るな! 出血が——」 「なんで俺ともあろう者が、シクロの命令に従ったのか。なんでおまえともあろう者が、愛しのセイジュくんをシクロなんかに任せて前線まで行ったのか……」 「どういう、ことだ……?」 「最初からシクロ様々が王城中になんかしらの魔法を張り巡らしていた、違うんすかねー、シクロフスキ先輩?」 「そんなでたらめに応える義務はない」  沈黙が落ちた。 「くそっ、結構痛ぇな……。クロイゼン、おまえは長生きしろよ。セイジュくんと一緒、に……」 「アヴィ?! おい待て! 勝手に逝くな! 命令だ! 死ぬな!!」 「お話し中大変申し訳ございませんが」  場違いに冷えた声が聞こえた。シクロフスキ本人だ。 「シクロ、貴様……!」  フラフィ内のセイジュすら鳥肌が立つほどの魔力がクロイゼンに集中した。しかしシクロフスキはこう続ける。 「貴方にも死んでいただきます。そういった契約ですので」  二度目の銃声は妙に尾を引いた。

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