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第57話:死ねない男

「し、死んだふり……?」  セイジュが恐る恐る尋ねると、 「言うなよ〜、クロイゼン。これはこれで結構痛ぇんだからよぉ」  と、ベッドの奥から他ならぬアヴィリードの声がした。  かと思えばアヴィはむくっと起き上がり、ばさばさの黒髪を掻きむしった。 「あ、セイジュくん、驚かせてごめんね! あそこで俺が死んでないとシクロ倒せないと思ってたんだけどまさかきみが——」 「アヴィさん!!」  セイジュは思わず無傷で銃弾が当たった所だけ上着が破れているアヴィに飛びついた。 「セ、セイジュ! 止めろ! 俺以外の男に軽々と……」 「アヴィさんとクロイゼンが昔からの親友って知ってたから、もしアヴィさんが本当に亡くなってたら俺はクロイゼンにどう声を掛けたらいいか、どうやって慰めたり励ましたらいいか、っていうかそんなの無理だし、あああ、生きててよかったですうううううう!!」  セイジュは言いながら泣き出した。 「……つまりおまえが今アヴィに飛びついたのは、率直に言えば俺のため、という解釈でいいのか? アヴィの方が魅力的、とかではなく」 「当たり前じゃん! 今更何言ってんのクロイゼン?! 馬鹿じゃないの!?」  そうこうしている内に、近衛兵ではなく軍の部隊が近付いてきているのが分かった。 「セイジュくん、種明かしだけしておくよ。俺はとんでもない混血児なんだ。半分はゴーレムだから、身体は半分岩、でも表面は四分の一の人間、残りの四分の一は、ありとあらゆる昆虫や両生類で構成されてて、俺はそれを自分の意志で移動させることが可能だ」    セイジュの頭に大きな「?」が浮かんだ。 「つまり、シクロに撃たれたのはその両生類の部分。具体的に言えば蛇と蛙。そこで弾丸の威力を抑えて、ゴーレムの岩でガードした。出血したのは皮膚が人間だから。これで通じるかな」  セイジュの頭に、今度は大きな「???」が浮かんだ。 「おっと、そこまで来たな。じゃあおまえらは個室にでも行ってろ。プレスのことは任せとけ。でも明朝にはまた連絡するからな」 「おまえに任せる、アヴィ」 「はいよー、王子様」  次の瞬間、セイジュとクロイゼンは例の『個室』にいた。

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