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第58話;ASAP

「おまえと話がしたいと言った直後に何だが……」  椅子に座ったクロイゼンがばつが悪そうに言う。 「セイジュ、俺は今、おまえを抱きたくて仕方がない。だが騒ぎの前に言った通り、おまえはまだ本当の恋愛を理解しているのか、正直分からんのだ。だからやはり、俺におまえを抱く資格があるか……」  苦渋、という文字を顔に書いたような表情でクロイゼンは言ったが、向かいの椅子に座ったセイジュはこう返した。 「何それ? エッチなことするのに資格とかそういうのって必要なの?」  あまりにもあっけらかんと言い放ったセイジュを思わずクロイゼンが見上げる。 「俺さ、あんな村の出身だから法律とか知らないんだけど、なんか決まりとかあるの? 好きな人と一緒に気持ちよくなりたい、ただそれだけのことに、必要な書類提出とか資格を得るとか、そういう法律あるの?」 「い、いや、ないが……」 「じゃあいいじゃん」  セイジュは立ち上がり、一瞬身を引いたクロイゼンの膝の上にまたがった。クロイゼンはセイジュ自身がすでに興奮していることを察する。 「俺は、クロイゼンが好きだよ。だから、そういうことしたい。安全な内に、一刻も早く」  言いながら、セイジュの腰は前後に動いており、少しずつ呼吸が速まっている。 「セイジュ……」  クロイゼンの少々驚いた声などどこ吹く風で、セイジュはクロイゼンの黒いシャツのボタンを外し始めた。 「おいセイジュ! いったい何を!」 「……恐かったんだよ」  シャツを脱がすと、セイジュは自らの上着も脱ぎ捨て、ペトリと肌と肌を重ねた。 「村のみんなのこととか、クロイゼンが外に行ってる間とか、ヴィネに襲われた時とか、アヴィさんが撃たれたと思った時とか、ずっとずっと、もう、俺は恐くて……」  そこまで言って、セイジュはクロイゼンのものを口に含み舐め始めた。 「くっ、セイジュ……おまえという奴は……」  セイジュはクロイゼンの股間に頭を埋めたまま上目遣いで、 「クロイゼンの全部、俺にちょうだい?」  と言った。

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