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7.愛、故に

「けっ、ケイ……?」  ルーカスが隣に立つや否やセーターを脱ぎ出した。  ――自分の前で服を脱ぐ。  ついその点にだけ意識を向けてしまう。(あふ)れ出す唾液。慌てて飲み下すとセーターを差し出してくる。 「着てみろよ」 「え? あっ……うっ、うん!」  カメラをカウンターに。代わってセーターを受け取る。顔が熱い。着替えをするように気持ちを切り替えたい。(じん)速に。確実に。 「ん。やっぱり白だな」  着替え終えるなり断言した。しかし、それ以上は何も言わない。前髪、両の上(まぶた)に口付け、乱れたブロンドを整えていく。穏やかでありながらどこか恍惚(こうこつ)としているようでもある。  ――間違いない。  景介が白いセーターにこだわる訳。次に口にするであろうその答えに備えて身構える。 「お前の目と、髪を引き立てるのは」  予想通りだった。それでも胸は熱く、むず(がゆ)い。 「文句なんか言わせねえよ。そんなヤツ俺が黙らせてやる」  やりかねない。誰であろうと果敢に立ち向かっていくだろう。止められるだろうか。考えるだに胃が痛む。 「だから、そういうのは全部度外視にして考えてみてくれ」  真っ直ぐに見つめられる。夜空を彷彿(ほうふつ)とさせるような黒い瞳。瞬く星々の輝きに性懲りもなく魅せられていく。 「えっ……えっと……」  言い(よど)むルーカス。景介は無言のままルーカスの頬に触れる。目を逸らしても視線が全身を、心を(くすぐ)ってくる。逃げ切れない。  ――完敗だ。 「……白に、させて……いただきます」  案の定景介はご満悦だ。唇に大きな(いかだ)を浮かべ出す。 「ありがとな」  景介は心からこの色を愛してくれている。それ故のこだわり――強要だ。無碍(むげ)には出来ない。 「へっ? けっ、ケイ……?」  不意に景介が座り込んだ。具合でも悪いのだろうか。 「ちょっ!?」  顔を(のぞ)き込もうとした直後、景介の白い手がルーカスのズボンのベルトに触れた――。

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