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8.愛の輪郭(★)

「えっ!? なっ!? えっ!?」  さりげなく太(もも)のあたりを押された。シンクに腰を預ける格好になる。状況を飲み込めず、ファスナーをおろされても目を白黒させるばかり。されるがままだった。 「わがまま聞いてもらったから」 「わがままだなんて……あっ……!」  躊躇(ちゅうちょ)なくペニスを(くわ)え込む。 「けっ、けい! まっ、待っ――」  伏せられた目。先は(とが)り、黒い(まつ)毛で縁取られている。相も変わらず凛としていて美しい。だがその口元、形のいいやわらかな唇にはペニスが()め込まれている。  倒錯的だ。目が離せない。心のフィルムに記録していく。(すみ)から隅まで。余すことなく。 「はっ、ゃ、ンッ!」  温かく湿った感触。滑らかなのは舌。硬質なのは歯だろうか。噛み千切られる。そんな事態にはなりえないと理解しつつも背に緊張が走る。 「んっ……! あぁッ……」  喉奥まで咥え込み、扱いていく。色違いの瞳はおろか足腰までもが(とろ)け始めた。このまま身を委ねてしまいたい。そんな欲が頭をもたげる中ルーカスは首を左右に振った。 「べっ、ベッド! ベッド……いこ……っ」 「ここでいいだろ」 「オレ、も何かっ、~~しっ、しっくす……ないん、とか」 「いい。お前はこのままで」  まるで聞き入れてもらえない。歯(がゆ)い。景介の肩に手を伸ばす。力が入らない。押すというには弱く乗せるに留まる。 「ちょっ、ケイ……っ」  あろうことかその腕に頬擦りをしてきた。それも口に含んだまま。  ――彼がここまでする訳。  大方見当はついている。ハメ撮りだ。景介は真っ向からNOを突き付けた。自身の乱れ咲く姿はルーカスの世界にふさわしくない。耐えられないと。ルーカスはそんな景介の気持ちを()み、諦めた。  しかしながら、当の景介は未だ罪悪感を抱き続けている。故にこうも励んでくれているのだろう。 「あ、あのことなら……も、……あっ!? ぐぁ……ッ!」  亀頭(きとう)に緩く歯を立てられた。視界が明滅し、背が大きく仰け反る。 「はッ、ぅ……いっ! ……あっ、ぅ……」  (あふ)れ出る蜜。そのすべてを取り込まんとばかりに(どん)欲に吸い付いてくる。 「~~っ、すっ、吸わなぃ、で……っ、あァッ……ッぁ、アハァッッッ!!」  まずい。このままでは(おぼ)れてしまう。何とかしなければ。腰を横にスライドさせて距離を稼ごうとする。 「あッ?! はぅッ、……けい……っ」  あえなく拘束されてしまった。腰には景介の右腕がしっかりと巻き付けられている。 「はなっ、して! んンッ! けっ、けい……っ!」  色違いの瞳から涙が零れ落ちる。 「…………」  景介の瞳の黒が一層深いものになっていく。  ――欲情している。  率直にそう思った。そして同時に悟る。思い違いであったのだと。納得しかけたところでまた首を左右に振った。バランスは大事だ。言い訳がましく理由を積み上げて足を伸ばす――。

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