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9.烙印(★)
少々気が引けるが仕方がない。留守になっている景介 の足元、股の間へと忍び寄り指の腹でそれを捉える。温かい。芯を持ち始めているようだ。ゆっくりと体重をかけていく。
「おい」
「痛ッ!!」
足首を掴まれた。かかる力はやや強いように思う。
「~~っ、ケイ! お願っ、おッ、オレにも何か――」
「SMでもしようってのか?」
「ちっ、違――」
「100年はえーんだよ、バーカ」
苦笑まじりに咎 められる。しかし、それらの装飾はまるで意味をなさなかった。無機質な言葉だけがルーカスの心に沈み、荒波を生む。
交際して半年近く。二度繋がり合った。けれど、そのいずれにおいても景介が達することはなかった。故に景介も悟ったのだろう。不得手であると。透明な鎖で自身を縛り上げ錠をかける。もうこれ以上余計なことはするなと。
「……焦らなくていい。必要ない。十分なんだ」
色違いの瞳が快感とは別の涙で濡れていく。
「……あっ!? ン……くっ!」
先端を握り、竿 を舐め上げる。見せつけるように。艶やかな笑みまで添えて。淫靡 だ。自身の醜態も忘れて魅せられていく。
「あ゛! あぁ!! だっ、ダメ! ダメッ!!!!」
再び咥え込んだ。ピストン。甘噛み。吸い付き。揉み込み。感覚が追い付かない。意思とは関係なしに嬌声が上がる。
「あっ!! ……くっ……っンぁあッ!!」
腰に甘くひりつくような痺 れが。これには覚えがある。最速だ。我ながら情けない。
「ごっ、ごめ! ……オレ、もっ、そろ、……そろ……っ」
景介の肩をやんわりと押す。すると彼はゆっくりと口を離した。応じてくれないものと思っていた。それだけに肩透かしをくらったような心地になる。
「……くれよ」
「……は? ……はっ!? えっ!? ……あっ……えっ!?」
「……ほし。……ルー……」
自身の腹を擦りながら求めてくる。凄まじいまでの飢えと渇きを感じた。想像しているのだろう。腹に子種を迎え一つになる瞬間のことを。貪欲なまでに求められている。その実感が起爆剤になった。
「あっ! あっ、けっ、ケイ……っ、け、い……ッ!!」
「はぁ……っ、るー、るぅ……ンンっ……」
鳴り響くリップ音。蜜と蜜とが混ざり合う音。耳を塞ぎたくなるような淫猥な音色 が不意に止んだ。
「あぐっ、あっ! あっ、~~~っ!!!!!!!」
視界が明滅した。直後脱力感に襲われる。
「ハァハァ……はっ、……ぅ……っ」
膝 が折れ、気付けばキッチンの床に倒れ込んでいた――。
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