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第10話

「違うとか言わせない。ああ送れば誰だってびっくりして相手のところに飛んでくだろう。計算してやってて、何言ってる」 ネクタイが邪魔で苛ついた俺はボタンとボタンの間に手を入れる。先生の手が上から重なってそれを止めようとするが無駄に指が絡むだけ。俺は声のトーンを落とした。 「そういった駆け引きをするなら、今すぐ抱くぞ!」  力任せにシャツを左右に広げる。ボタンがカラカラと落ちて、先生は慌てて胸元を抑える。腕の隙間から白いアンダーシャツが見えた。 「……や……め」  首筋に顔を落とそうとすると先生の両手が思わぬ力で俺の肩に当たった。 「好きなら何をしてもいいのか! 私の気持ちはお構いなしか!」 「先生」 「……私は約束を覚えてる。決して破るつもりはない」  怯んだ俺の下から先生は抜け出ようと必死だった。やっと上半身だけ起こして俺を睨む。 「だから君もちゃんと順序を踏んでくれ」  順序? 俺は低く笑った。ルールとか言う割に、アンタは立派な駆け引きをしてるじゃないか。俺も顔を上げて先生を見た。 「今回のことは先生が悪い。例え見たとしても、俺にメールをしてくるべきじゃなかった」 「…………」 「俺がこうして来ることは予測できたはずだ。こうなることも」 「藤田……」 「アンタ、俺に惹かれてるんだよ。だから女とキスしてるのを見て嫉妬した。どうしようもなくなってメールしてきた。それに乗った俺も悪い。けど」  俺は立って、先生のこともゆっくりと立たせた。乱れた髪を梳いたが、先生は拒まなかった。 「順序を乱したのは先生だ。俺だって約束を破るつもりはない。だからこうやって俺を煽るのは止めてくれ」 「藤田……」  乱暴してごめん、と俺は耳元で謝った。 「俺、マジでテスト頑張るから。先生との約束守るから。……それから、先生を好きとか言いながら、女にキスしてごめん」  そっと先生の泣きボクロにキスをすると、俺は部屋を出て体育館に走った。

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