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第15話
「休憩!」
ハーフコートで4対4をしていた。これだけ背の高い男どもがうようよしていると、とにかく暑苦しいし、接触も多い。俺は自分のタオルを取り、ドリンク片手に体育館の外に出た。
「遼一」
「お、巧」
「すげープレイにキレがあるじゃん」
「いつもは無いのかよ」
俺は足で膝を軽く蹴った。巧が俺の髪を見て、不思議そうに言う。
「あれ、遼一、おまえ背、伸びた?」
「……測ってねぇな」
「190だっけ?」
「そう」
巧は185でそれでも選抜の中では小さい方だ。二年では俺と巧だけが先発メンバーに入っている。
「いや、勉強頑張るとか言ってた時には対外試合がどうなるか心配だったけど、試験も終わったしな。どうだった?」
「うん……」
多分。数学は満点を取れていると思うのだが。そうでなくては恥ずかしい。あれだけ押しておいてダメでした、じゃ、めちゃくちゃ恰好が悪い。
「古文だよ、古文!」
「古文……? あ、ああ、平均取れてればな……」
とぼけた返事に巧は眉をひそめた。
「あれ。本当に古文の渡辺先生狙いじゃなかったのか」
「まだそんなこと言ってんのか」
俺はボトルに口を付けた。暑い。タオルで額の汗を拭う。つられて巧もタオルで顔を拭いた。
「今はもうそのことは考えてない。試合のことだけ考えてる」
「まぁ……。今回の試合はいろんな人が来ますよ。スカウトマンに他校の女子に……あ、うちの先生たちも来るんだって」
「は?」
先生? どの先生? 俺は野村先生のことを思い出して、どきりとする。
「そういえば野村先生はいつも見にきてるなぁ、俺たちの試合とか」
「試合?」
巧は当たり前のように言った。練習はともかく、試合は知らない。俺は見たことがない。俺はその話題に食いついた。
「何で数学の先生が見にきてるんだよ」
「いや、俺もたまたま休憩中に用があって二階の観覧席のところに行ったのよ。そしたら入り口のところで立っててさ。なんか隠れる感じ? だから俺たちの試合見に来たんだったら前で見てくださいよーって言ったの」
「で?」
「何か通りかかっただけだから、とか言ってたけど、あれは観に来てるんだな。で、いつか聞いたことがあるんだけど、昔バスケやりたかったんだってさ」
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