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第21話

「こういうのは大歓迎だから。いつでも襲いに来て」  車から降りると俺は先生のことを見ていた。先生も俺のことをじっと見つめている。互いにそんな時間がしばらく過ぎて、俺は先生に「どうぞ」と手を上げた。先生が先に帰ってくれないと心配で帰れない。先生も人差し指で俺の家の方向を指す。俺は首を振って先生がエンジンを掛けるのを待っていた。先生が俺を手で呼ぶ。すーっと窓が開いて、助手席側に寄ってくる。 「君が帰るところを見ないと帰れないじゃないか」 「……先生を見送りたいんだよ」 「……それは、私も……」  今夜の先生は暗闇の力を借りて、随分と素直だ。俺は先生の泣きボクロにキスすると仕方なく頷いた。 「わかった。帰るから。先生も気を付けて帰ってよ」 「ありがとう。今日はゆっくりおやすみ、藤田」 「先生も」  先生も仕方なく、というふうにエンジンを掛ける。俺に手を振って、そっと車を出した。本当に名残惜しげに。そんな顔をするくらいなら抱かれてくれればいいじゃないか。あ。  先生の後ろ姿を俺は見られなかった。もしかして。これって、最後? 俺、ヤッちゃった? 試験の内容を思い出そうとするが、もう忘れてしまった。まさか点、落とした? 先生の最後の俺への思いやりってヤツ?  車が曲がって視界から消えても、俺は歩き出すことができずにそのまま立ちすくんでいた。  

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