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第37話

 露天風呂は自然に囲まれて本当に気持ちがいい。中の風呂もいいが熱い空気がこもって、なんとなく頭がぼうっとする。夜になり、ところどころに薄暗い灯りが付き幻想的な雰囲気を醸し出している。空気が澄んで、呼吸も弾む。  先生はどうして人と入るのを嫌がるんだろう。神経質そうな人だからあり得ることだけど、あの頑なさはそれだけじゃないような気がした。一緒に入ってしたいことはいっぱいあったのにな。まぁ、イヤらしいことばかりで先生は嫌がるだろうけど。先生と旅行に来られただけでもよしとするか。それに。俺は更に赤くなる。今夜。先生のことを抱いてもいいのかな。男を抱くのは初めてだけど、辛い思いをさせないようにしよう。だけど。先生の言うことが確かなら一晩限りの相手とそういうことをしているってことになる。何で二十八まで誰とも付き合うことがなかったんだろう。ゆきずりって病気とか、いろいろ面倒だと思うのに。一人に決めてしまえば安心だとか思わないんだろうか。結局、俺のものになったけど。これからは絶対にそんなことはさせない。もう俺以外の誰ともできないようにしてやる。俺は絶対浮気は許さない。しっかりしている反面、どこか危うさを持っている人だから、俺が注意しないといけないな。  俺は風呂を出て浴衣を着て部屋に戻ることにした。しかしうまく着られない。浴衣を着る機会なんてほとんどないに等しいから。合宿とかではスウェットとかジャージのままでうろうろしているし、こんな経験はなかなかない。本当に先生と二人きり……。そう思うとまた俺の頬が熱くなった。 「ただいま」 「お帰り」 「えっ……?」  先生は本を閉じ、テーブルに置く。座敷にはもう布団が二組敷かれていて、俺は意識しないようにして先生のいる広縁に向かった。 「……先生、眼鏡するんだ」 「たまにね」 「っていうか……」  何で浴衣を着ていないのか。薄いグレーのスウェットの上下は自宅から持ってきたものだろう。いや、普通ここは浴衣のはず。何だか先生のすることはおかしい。いや、俺に身体を見せたくないのか、とも思ったが、夏でも長袖のシャツを着ていることを思い出して、俺は先生の手を引いて立ち上がらせた。

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