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第38話

「藤田……」  布団の上にむりやり座らせて、俺は先生の前に座った。目を合わせようとしない。俺は眼鏡を取って枕元に置いた。そのままじっと先生を見つめる。握りしめた手が震えている。俺が先生に口付けようとすると、先生が急に身体を引いた。怯えている。俺を見て困惑している。 「……俺が生徒だからとか、そういうんじゃないよね?」 「…………」 「もう俺たち、付き合ってるんだし。そうだろ?」  同意を求めると、先生は浅く頷いた。 「それってセックス込みってことだよね」 「……藤田……」 「しつこいようだけど、俺の付き合うってそういうこと。裕貴さんは?」  先生に何も言えるはずがない。それをわかっていて聞こうとする俺は意地が悪いだろうか。 「好きな人と抱き合いたいって気持ちは、あるんだよね?」  ゆっくりと……先生は頷いた。 「そうか。そうだよね。恋人同士の初めての旅行だよ。夜することはひとつだよね」  逃げようとした先生の腕を強く引っ張る。すぐに俺の足元に蹲って、俺に背を向けた。スウェットを引きはがそうとするが先生も負けない。必死になって服を抑える。先生の身体からいい匂いがして、欲情する。何で。今更。そんな言葉が頭を過って、俺はつい乱暴になる。 「……脱げって!」 「嫌だ!」 「何でだよ!」  転がる先生の上に馬乗りになって、小さい顔を抑える。むりやり口付けると先生は眉根に皺を寄せた。歯を割ろうとしても舌の力では開かない。俺は親指を食いしばった先生の歯の奥に突っ込んだ。びっくりして息を飲んだ先生の舌と舌とを絡ませる。噛みつくようなキスに先生は何度も喉を鳴らした。腕に先生の手が掛かってなんとか動かそうとしているが全力で抑えているのだ。敵うはずがない。 「んっ……んん!」  俺はキスしながら片手で胸から腰へと手を下す。撫でるだけで先生は身体をしならせ、びくびくと反応する。独占欲と征服欲とで俺は頭に血が上っていた。スウェットの上着の中に手を入れると、何と更に下着まで着込んでいた。暖房が効いている部屋でこんなのおかしすぎる。暑くないのだろうか。その下に手を入れ、素肌に触れようとした時だった。

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