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第39話
「…………っ!」
俺は先生から身体を上げた。唇を噛まれた。肩を上下させている先生の唇にも血が付いている。俺はしばらく手の甲で唇を抑えた。そんなに強くは噛まれていない。だがここまで拒否されると本当に頭にくる。俺は先生の髪に手を差し入れると顔をもっと上に向かせる。露わになった首筋に舌を這わせる。先生は苦しそうに咳き込んだ。俺の腰の下の足がバタバタと動いていたが、今は力なくもがくだけだ。
「……噛むぞ」
「止めて……」
「教壇に立てなくなるな。どうする?」
「お願い……だから……」
甘過ぎる夜を期待していたわけでもないが、ここまで拒否されるとどうしていいかわからなくなる。身体中に痕を付けて俺のものだと証明したくなる。この人はわかっていない。自分が俺を煽ってばかりいるのを。それともわかってやっているのなら、どうしようもない魔性だ。
「……抵抗するなよ」
両手で顔を覆った先生のスウェットとアンダーウェアを一気に捲り上げる。その時、目に飛び込んできたのは腹の傷だった。昔のもののようで、今は薄赤の引き攣れて盛り上がったものだった。首まで捲り上げるとその痕は上まで続いていて、薄い胸の隆起の間で止まっていた。先生はまったく抵抗しないので、思わず上着を脱がしてしまうと左腕の上部の筋肉、右手の肘の下辺りにも大きな傷がある。下のスウェットと下着も一緒に脱がす。右の腿に、左のふくらはぎに大きな痕が、その他細かな傷があちこちにあった。言葉もなくそれらを眺めていると、先生の状態がおかしくなっていることに気付く。呼吸が不規則で喘ぐように肩を上下させ、布団に必死で爪を立てている。口からは唾液が零れ、目の焦点が合ってない。くるりとうつ伏せになった背の大きな傷も俺の動きを止めていた。
「助けて……助け……て」
「裕貴? 裕貴!」
「痛い……痛いよ……」
最後に二、三度、激しい喘鳴が聞こえた後、ぱたりと何も聞こえなくなる。
「裕貴! 裕貴さん!」
抱き上げた先生は失神していた。
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