「……ダメだよ……隣りに聞こえちゃう……」 「いいじゃん……見られてるわけじゃないし……」 「あ……あんっ」 　隣りのカップルだ。早速盛ってやがる。俺は考える。平然としているように見えるが、先生はとても苦しんでいるように見える。その根本も知らずに無暗に触れてはいけないような気がした。傷を見た今、奪ってしまっていいのか、先生の答えを待つべきか、どちらを先生が望むのか俺にはまったくわからない。この人は少し天邪鬼なところがある。メール事件といい、俺がなんとか先生の本心に近付こうと努力しないと二人の関係が壊れる。壊れてもいいと思っている。だからといって事情を察するにも限界がある。本音を言ってくれない先生と付き合っていくのはなかなか難しいことだった。 「……藤田、当たってる」 「えっ？　あ」 　ヤバい。先生の尻に当たっているアレがしっかり反応して勃っていた。 「……察して」 「はいはい。若いなぁ」 　先生は嫌がるわけでもなく、俺の肩に頭を預けている。気持ちよさそうな顔をしている先生の泣きボクロに唇を押し付ける。先生が蠱惑的な表情で俺を見上げた。 「……藤田。したい？」 　今、抱いたらダメだと本能的に思った。このまま抱いてしまったら、先生は絶対に俺に苦しみを言ってくれなくなる。何かあるたびに身体でごまかされるだろう。俺は首を振った。 「……したいんだろう？」 「したいよ」 「私も、って言ったら？　それでも抱かない？」 　また駆け引きが始まった。これは悪い癖なのだな、と思うことにする。それに先生にとってセックスはあまり意味がないものなのかもしれない。ただ快楽を得るためだけのものなのか。 「俺は裕貴さんの全部が欲しいから。今は止める」 「……そう」 　急に先生が立ち上がり風呂から上がった。俺の腕を強く引く。風呂から出るのかと思ったら急に肩を押されて、俺は風呂桶の縁に座り込んだ。その足の間に先生は跪き近付いてくる。阻止する前に先生は俺のモノを口に含んでしまった。 「ちょ……！　止めろよ！」 　隣りを気にして小さな声で諌めるが、先生は温かな口の奥深くまでソレを飲み込み、そこまでの感触の快感を味わったことのない俺は思わず先生の頭をぐっと自分に引き寄せていた。