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第48話

 俺は立ち止まって言ってしまっていた。そこまで聞いて知らないフリはできない。先生もきっと俺が巧から聞かなければ、そのことを言ってはくれなかっただろう。どういう経緯かは知らないが、恋人として見過ごせない。あの頑固な先生に聞くより、相手に聞く方が手っ取り早い。巧はしばらく呆気にとられて俺を見ていたが、大きなため息をひとつついた。 「……おまえの好きな人って、野村先生だったんだな」  答えることができず、思わず詰まった。巧は俺の心に敏感だ。割と無表情な俺の気持ちを読み取ることができる、昔からの親友だ。 「もしかして、とは思ってたけど……。そっか……。付き合ってんの?」 「中間試験の後から付き合い出した」 「だからか。野村先生に告った子が言われたんだってさ。好きな人がいるから、って」 「先生が?」 「それまではごめん、とかすまない、とかあたりさわりのない返事だった先生が急にそんなこと言い出したんで、女子の中ではちょっとした噂だったんだよね。誰かと付き合ってるんじゃないかって」  巧が腕時計を見て、俺の背中を叩いた。周りの生徒も少なくなってきている。早足で俺達は学校に向かった。 「店は教えるけど、入らない方がいいと思うな」 「何で?」 「ソッチ系の人だと思うよ。わかるだろ、そういうの」  ヤクザ、とか? あの先生が? ゆきずりと、と言っていたが強請られて関係を続けているとか? わからない。考えれば考えるほどに頭がおかしくなりそうだ。 「ほら、急げ。遅刻するぞ」  頷いて走りはするものの気が乗らない。今日は先生の授業がある。とても受けられる気分ではなかったのだ。

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