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第82話
「太陽に当てられちゃったのかな? 君の真っ直ぐで綺麗なところを見れば見るほど憧れて……そのカケラで傷つく。賢史も僕もね、心配していたのはそれなんだよ。賢史と寝てるのが気に入らないでしょ? 許せない。でもそうしないと自分をまともに保てない。君を好きでいられない。君に釣り合う人間になればなろうとするほど、苦しくて辛くてどうしようもなくなる。本当は裕貴さんだって君と寝たいよ。賢史となんか、他の誰かとなんか寝たくない。優しさでさえ苦痛なはず。でもそうしたら君の重荷になるから、それができない。人間は矛盾の中で生きなくてはならない。けどうまくそこをごまかしてる。君はごまかそうとしない。正論を無意識にでも目の前に叩き付けられるとね、わかっていても人は傷つくものなの」
「……よく、意味が……」
「高校生に察しろとは言わないし、無理なのはわかってるよ。バスケが好き?」
俺は反射的に頷いていた。
「それなら、裕貴さんとは別れること。いいね」
「それは……!」
「だから言ったでしょ! 僕に何を言っても解決はしないと!」
正論を言われると、傷つく。これがそうなのか。俺は唇を噛んだ。どうすればいいのか、本当にわからないんだ。
「裕貴さんのことが大好きでもっと理解したいなら」
百合さんが俺の隣りに歩いてきた。見上げると氷のような視線が俺を捉えた。
「アンタも汚れなよ」
「…………?」
止められなかった。百合さんの舌が俺の唇に触れた。ゆっくりと舐められる。汚れる? これが? 先生と同じように、俺も好きな人ではなく、他の人と寝ろと言うことか? わけがわからない。俺は顔を背けて、唇を拭った。
「裕貴さんと同じになってみればわかるんじゃない? 負い目を持てば、裕貴さんの気持ちもわかるかも……」
「それはあなたを抱けと言ってるんですか?」
「そう。だって裕貴さんはアンタが好きなのに賢史と寝てるんでしょ? じゃアンタも裕貴さんを好きだけど僕を抱けば同じ立場になるじゃん」
「深沢さんを煽る道具にはなりたくありません」
百合さんが目を見開いて俺を見た。
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