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第96話

 先生と別れると決めたのは、俺が先生を支えられない未熟者だと思い知ったからだ。決してバスケだけを選んだわけではなかった。それをいちいち先生に説明しなかったのは俺の小さなプライド。十七歳という中途半端な時期、すべてが先生の重荷になり、迷惑になってしまう。突っ走って先生をかっさらうことも考えた。だが、俺が願うのは先生の幸せだ。それを考えた時、まだ高校生の俺にできることは離れることしかなかったのだ。俺を好きになればなるほど先生は苦しくて深沢さんの身体を求めた。その意味が今なら少しはわかる気がする。先生は俺の将来を考え、自分の想いを押し通すことができなかったのだ。彼は本当に先生であり、俺を愛してくれていたのだ。別れることは辛かったけれど、俺は先生を支えることができるような人間になれるまで、彼に連絡はしないと決めたのだ。いや、完璧に支えることなどできはしないが、足手まといにならない程度にはなりたかったのだ。だからまずバスケに打ち込んだ。結果を出すために。あの時、なにもできないままでは俺は先生を潰してしまう。それだけは避けたかった。 先生が今どうしているか、もしかしたら誰かと一緒にいるのか、俺のことをまだ好きでいてくれるのか、それはわからないけれど、今、何とか自分のことを自力でできるような形になって、俺はそろそろひとつの答えを出そうとしている。姉が旅立ち、家から出て、自分の力で生きる術を掴み始めた今なら、先生に会ってもいいような気がするのだ。それがどういう結果になろうとも、俺の先生に対してのけじめなのだ。  もし幸せになっているのなら、俺は身を引こうと考えていた。

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