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第107話

「……手と口、どっちがいい?」 「……え」  先生は俺の肩に顔を押し付けた。むずがるように首を振る。 「どっちを言っても、何とも思わないから」  先生の上がった息が耳をくすぐる。それだけでも俺の背筋はぞくっとした。 「……口で……して」  俺は先生の頭をぽんぽんと撫でた。かわいらしい。ここまでしておいて、まるで初めての子のような反応で俺は嬉しくなる。深沢さんとどうだとか考えなくていい。俺は俺のまま、先生に触れればいいのだ。 「見てて」  先生の足を広げると俺はそれを肩に持ち上げ、顔を近付けた。先生が膝を閉じようとしたが、もう適わなかった。俺の首を絞め付けるように先生の腿が触れてくる。舌で愛撫していると先生の喘ぎ声が初めて漏れた。 「……ん……あぅ……遼一……」  ちらりと上を見ると先生は必死になって枕の端を握りしめている。俺は改めて、彼に告白する。 「……抱かせて。二十四の俺に。三十五の裕貴さんを」 「遼一……」  先生の潤んだ瞳から涙が零れ落ちた。 ――……抱かせて。十七の俺に。二十八の裕貴さんを。 「忘れてないんだね。あの日のことを。私もずっと忘れてなかったよ」 「裕貴」  口の中で何度も舌を動かすと先生は苦しそうで、それでいて艶のある声を漏らした。 「遼一……もう、ダメ……」  俺は先生の言葉を無視して更に唇も動かしていく。合わせられない足を必死に動かして、先生は身を捩る。 「ダメ……出ちゃうから……。ねぇ……」  甘ったるい声が何度も俺に訴え掛けた。かわいそうだと思う反面、もっと気持ちよくなってほしいと思いおもわず頭を振った。 「いや……っ……!」  温かい液体が俺の喉を勢いよく通る。こんな感じで俺のモノを飲んだのか。うまいとは思わないが、先生が俺にしてくれたことを俺もしてあげたかった。 「……遼一……ダメ……」  シーツを掻きむしる指が綺麗で俺はゆっくりとそれをなぞった。顔を上げて足を下ろすと先生は両手で顔を隠していた。 「大丈夫?」 「……何で……」 「え? 飲んだらダメなの?」 「……汚いよ……」 「裕貴だって俺の飲んだじゃん」  真っ赤な頬で顔を背けた先生の上に覆い被さる。あの時と同じ、すっぽりと俺の下に収まった先生は驚いたように俺を見た。

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