109 / 110

第109話

 先生は頬を赤らめながら、小さく首を振る。目を合わせないように俺に跨ると、そっと俺のペニスに手を添え、少しずつ腰を落としていく。息を吐きながら、飲み込むその姿を見て、俺は我慢できず身体を起こしてしまった。先生の腰ががくんと落ちて、深く繋がる。先生が思わず、俺の背中に爪を立てた。 「っ……!」  声を上げたのは先生の方だった。強く抱きしめながら先生の中を穿つ。締まって、良すぎて、痛みなどまったく気にならない。 「りょ……いち……遼一……!」 「うん……裕貴」  消えない跡をもっとつけてくれればいいと思う。先生ともっと一緒になりたい。全身の傷をうつされたい。腰を何度も上げながら、痛みを感じながらもどこか恍惚とした表情の先生の顔を見詰め続ける。限界まで逸らした喉に歯を立てると中がぎゅっと締まった。 「あ、……っ、ダメ……っ!」 「出していいよ」 「や……」  先生の指ががむしゃらに俺の髪を掻き乱す。息が上がって、言葉が切れ切れになる。 「一緒に……お願い……」  俺も、もう我慢できそうになかった。繋がったまま慎重に先生を仰向けに落とすと、先生の唇をねだる。ねだる前に思わず、というようにしがみついてきた先生がかわいくて、髪の中に指を差し入れて撫でる。唇が唾液で滑る。足りない。全然足りない。これからもずっと、満足することなんてないんだろう。先生を求め続けて、何度でも求め続けて、そうして日々を重ねていく。先生が嫌だ、と言っても、もう放してなんかやらない。ずっと俺は彼を抱きしめ続ける。 「もう……遼一……」 「うん、一緒にイこう」  我慢できないように先生が身体を揺する。もうめちゃくちゃだ。俺達は一緒に登り詰めるために何度も何度も腰を蠢かせた。境目が分からなくなった頃、俺達は息を止めた。 カーテンの色が白み始めるまで俺達は互いを求めあった。先生の身体には傷と、俺の独占欲の印が刻み込まれている。無意識ながら、その痕と跡をゆっくりと指で撫でている先生が愛おしくて、キスの雨を降らす。彼の目は焦点も合っていないのに、俺を離したくなくて、もう一度と手を伸ばす。それを合図にまた肌を重ねる。溶けることができなくてもいい。何度も肌を触れ合わせてすぐ側にいると感じられればそれでいい。その温かさが二人を結ぶ。 先生は俺に突き上げられて、力なく掠れた小さな声を上げた。それを聞きながら俺はもっと奥へと身体を押入れ、その中で達する。先生の尻からは絶え間なく白い泡立った体液が零れ落ち、俺はその淫らな様を心ゆくまで眺めてから身体を引いた。先生の身体が少し痙攣して、長い睫毛が微かに震える。目の焦点が合っていないのに、まだキスをねだるのがとても愛しくて、だるい身体で覆い被さり唾液を混ぜながら深く深く口付ける。先生と抱き合うことがこんなに心を満たしてくれる。もっと一緒にいたい。もっと側にいたい。そう、永遠に。そう思いながら俺は意識を手放していた。

ともだちにシェアしよう!