14 / 16

【番外編】 夏なので進藤くんと海へ行く(2)

今日の俺はなぜか自分の意思で、慣れない人達の集まりに乗り込もうとしていた。 車を出してくれる人が迎えにくるので、待ち合わせ時間までに進藤くんの家に向かう。 「おはよう尾崎さん」 「おはよう…」 「あれ、元気ない?朝ごはん食べた?」 「あ…うん。俺、やっぱり行くのやめればよかった…」 「え!?そんなこと言わないでよ。行ったら絶対楽しいって」 そしてバンが迎えに来て、車に乗り込んだ。 車内の人たちの顔面偏差値が高すぎて圧倒された。 え…進藤くんの高校の友達もいるって言ったじゃん…どれ? 全員モデルなんじゃないの?というくらい容姿が整っていた。結局聞いてみたところ、一番キラキラしててモデルすげーなと思った男の子がモデルではなく進藤くんの学校の子で、その横の背の高いイケメンも進藤くんと仲がいい学校の友達だった。 この時点で自分が完全に浮いてる存在なのをハッキリと自覚する。 やっぱり来なければよかったよぉ… 俺はひたすら、自分が置物か何かだという想像をして座っていた。 あ、そうだ!俺は進藤くんの付き人なんだ。うん。そう思おう。すると少し気が楽になった。 なのに、俺が会うなり行くのをやめればよかったとか言い出したのを気にしてか、進藤くんがあれこれ話しかけて構ってくる。 お菓子はいるか、とか飲み物はどうだとか、車酔いしてないか、とか。これじゃあ逆だよ。俺が付き人なのに…。 「ううん、大丈夫」 付き人はうまくいかないので、俺はまた置物のフリに戻った。 しばらくすると、車窓から海が見えた。 わー!すごく久しぶりに来たな。 海とかそうそう来るタイプじゃない。 俺の周りの人間もみんな海行こうぜってタイプじゃないから本当に何年ぶりかな。 なんだかんだ海を見ていたらテンションが上がってきた。 来てよかったかも! 「機嫌治った?」 俺が窓に張り付いてたら進藤くんがホッとしたような顔で聞いてきた。 「え?」 何だろう。機嫌悪いと思われてた?行きたくない感出しすぎてたかな。 「あ…ごめん。海見たらなんか楽しくなってきて」 「よかった」 進藤くんが微笑んだ。 やっぱりかっこいいな… と思った瞬間、乳首がピリピリした。緊張で忘れていたけどそういやこれがあったんだ。 とにかく今日一日バレないようにしないと…。 駐車場に着き、荷物をみんなで浜辺まで運んだ。 日除けのタープや、荷物置き場兼休憩用のテントを張り、BBQの下準備をする。 それがひと段落したらひと泳ぎしようとみんな水着姿になり波の方に向かって行った。 数少ない女の子達は日焼け止めを塗り直している。 俺はどうしようかと思ったけど一応水着姿に着替えてラッシュガードを羽織った。 「尾崎さん、首に日焼け止め塗ってあげるよ」 「あ、進藤くん。ありがとう」 進藤くんは日焼け止めを手に近づいてきて眉を顰めた。 「尾崎さん、それわざと俺のこと誘ってるんじゃないよね?」 「へ?」 「それで男の前に出る気?乳首勃ってるの丸わかりだよ」 「え!?」 俺は慌てて胸元を見た。白いラッシュガードなので乳首の勃起が目立ってしまっていた。 「うそ…どうしよう…昨日から急にピリピリし出して…」 「はぁ……ていうかそのラッシュガード何でそんなピタピタなの?」 「え、これ?高校の時のやつだから…前より結構太ったから思ったより小さかった…」 「え?これで太った?前は今より痩せてたの?!」 「うん…そうだけど?」 「はぁ……。まあいいや、俺のラッシュガード貸すから」 進藤くんは自分の着ていた黒いラッシュガードを脱ぎ始めた。 俺は慌てて止める。 「え!?いいよ、だって進藤くんどうするの?」 「尾崎さんに日焼け止めがっつり塗ってもらう」 そして上から睨まれた。 「はい…塗らせて頂きます…」 進藤くんのラッシュガードは当然オーバーサイズなので胸元も目立たなくなった。 俺のもせめて黒ならな… と反省しながらベンチに座る尾崎くんの背中に日焼け止めを塗る。 「ごめんね」 「いいよ、仕方ないじゃん」 「肩とか肩甲骨とか、綺麗に筋肉が付いてるね。かっこよくて羨ましい」 指先で筋肉の凹凸をなぞる。 「……ありがと」 すると急に振り返った進藤くんが襟をグイッと引っ張って耳打ちしてきた。 「そんなえっちな触り方しないで。家に帰ったら好きなだけいじって気持ち良くしてあげるから…帰るまで我慢ね?」 「え!?」 俺は真っ赤になって身体を離した。 そんなつもりなかったんだけど、無意識に変な撫で方してた!? 「ご、ごめんっ」 「真っ赤になって可愛い。あー、早く舐めたい」 「や、やめてよ!」 俺は焦って辺りを見回した。 「はは、誰もいないって」 「ばか…」 そんなこと言われたら余計乳首がピリピリしちゃうんだって!

ともだちにシェアしよう!