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【番外編】 夏なので進藤くんと海へ行く(3)
その後何とか普通に海で遊んで、BBQして、俺でもそれなりに楽しめた。
たまに目が合うと意地悪な顔で進藤くんがニヤッとしてくるので、カフェでバイトしていた時を思い出して懐かしくなった。
今は皆ビーチボールで遊ぶのに夢中になってて、俺はちょっと疲れたし喉が渇いたから抜け出した。
ペットボトルを持って少し離れた木陰に行き岩に腰掛ける。遠くに皆の姿が見えた。
「ここいいですか?」
「わっ!!は、はい…」
ボーッと海の方を見てたら横からいきなり声をかけられてビクッとした。
「すいません、驚かせて。僕皐月 っていいます」
進藤くんの学校の綺麗な子だ。俺がびっくりしたのでクスクス笑いながら隣に腰掛けた。
「進藤の彼氏さんですよね」
ブっ!!
俺は飲んでいた水を吐き出してしまった。
「わ、びっくりしたぁ。大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だけど、な何!?いきなり」
「え…と、ごめんなさい。進藤からそう聞いたんです」
「え!?な、え!?」
「あ、安心してください。僕もゲイなので。一緒に来てるの彼氏です」
俺が焦ってるので落ち着かせようとして手のひらをヒラヒラさせながら説明してくれる。綺麗な子は指先まで綺麗だな?
「は、はぁ…なるほど!?ゴホッ」
ドキドキしてうまく話せない。
何?進藤くん何てこと言っちゃってんの!?
心配そうに見つめてくる顔をまともに見てしまったが、内側から発光でもしてるのか?というくらい肌が白くて透き通ってキラキラして見える。
「本当は今日来る気なかったんだけど、進藤が彼氏連れてくるって言うので僕も来たんです。進藤と仲良いのは僕の彼で瀬川っていいます」
「はぁ…」
何で話しかけてきたんだろう。
「あ、すいません。周りにゲイの友達とかいなくて…会ってみたくなっちゃったんです。尾崎さんに」
話を聞いたら、性癖とか趣味のことで色々あったらしく落ち込んでいたところにこの海行きを誘われたらしい。
進藤くんなりに、友人の恋人を元気付けようとしたのかな。
「俺…ゲイってわけじゃないから何にもアドバイスとか出来ないけど…というかむしろ、進藤くんと付き合ってるのかもよくわからないし」
「え?そうなんですか?あの進藤があんなに甲斐甲斐しくお世話してるからよっぽど溺愛してる彼氏なんだなって思って見てましたけど」
で、溺愛!?どこが??
「進藤くんは好きって言ってくれるけど…俺なんかのどこが良いのかわからないし。それに、俺の意見はいつもあまり気にしてなさそうっていうか…」
「そうなの?でも今日なんてずっと尾崎さんに気を遣って…進藤は尾崎さんのことしか考えてなさそうですけどね」
「えぇ…??」
他人から見るとそう見えるの?
「へー、進藤って意外と尾崎さんに振り回されてるんだ…面白い。あの、尾崎さんあんまり自覚ないのかもしれないけど、あなたたぶん男からモテるタイプだから気をつけた方がいいよ。」
「はぁ?!」
急に何言ってるんだ??
「そ、そっちこそ気を付けないと変な人に連れ去られそうな見た目してるくせに…」
「まぁ実際連れ去られたことあるんだけど…それは置いておいて。なんか僕と同じ匂いがするから…尾崎さん」
スッと手が伸びてきて乳首を撫でられた。
「ヒッ!?」
驚いて皐月くんの顔を見ると、長いまつ毛がびっしり生えてる大きな瞳が潤んでいた。
「尾崎さんて可愛い…」
うわ、何だ?
サラサラの色素の薄い髪が海の風に靡いて揺れている。
ピンク色の唇が吊り上がって真珠のような歯が見えた。
「今度一緒にシたいな…」
手首の内側を撫でられた。ゾクゾクっとして俺は怖くなった。
すごく綺麗で清楚な子に見えたけど…どうやらただの良い子ではないようだ。
この子の彼氏って…大変そう…
そう思った時、海の方から背の高い人物がこちらに歩いてくるのが見えた。
皐月くんも気付いて立ち上がった。
「話せてよかったです。また遊んでください」
そう言って微笑んだ顔は年相応の爽やかな雰囲気に戻っていた。
そして近づいてきた人物の腕に皐月くんは腕を絡めて歩き去った。
「はぁ…びっくりしたぁ」
心臓がバクバクしていた。
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