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6.スラム街の闇医者と落ちてきた片翼の天使の驚愕①

 とある世界のとあるスラム街での事である。闇取引や人身売買などが横行しているその街の、親のいない子供たちが集まるちょっとした空き地に、『天使』は空から降ってきた。美しいその天使は名を『エルメール』と言い、スラム街の子供達に助けられ、『ヤクモ・スガワラ』が営んでいる診療所に連れていかれ、成り行きでヤクモとセックスをし、そうして天界に帰るまでの間、ヤクモの助手として、ヤクモの診療所でこき使われることとなったのであった。 「いてぇ、いてえよ先生!!」 「っせぇな、黙ってろ売人」  と、ヤクモのいう通り、本日ヤクモの診療室にやってきたのは、売り飛ばすための奴隷に、案外屈強であったそれに腕を折られてしまった売人であった。 「エル、そっちの添え木取れ」 「あぁ、これですか?」 「おう、オイてめー。痛み止めは出してやるけどな、骨折何ざすぐにはなおらねぇ。また来週にでも通って来い」 「来週も!? 骨折くらい、こうして固定して放っとけば治るんじゃねぇか?」 「てめぇの腕を折った奴、まあまあ上手く綺麗に折ってはいるけどよ……腫れて腐ったりしたら嫌だろ?」 「腐っ……困るぜ先生! 俺の腕だって、商売道具の一つなんだから、」 「だから、来週も通え、代は銀貨五枚な」 「はぁっ!? 五枚!!?」 「文句があるなら街に出て、それなりの医者に診てもらうことだな。まあ、街の警備兵にとっ捕まるのがオチだろうが」 「うっ……」  そうやって会話をしながらも、器用に売人の患部を固定して治療するヤクモを、美しい金髪をスカーフで一つにまとめた、先日この診療室にやってきた天使のエルメールがじとりと眺めている。随分小汚い男だ。これがヤクモがいつも言っている、エルメールを狙う売人とやらなのだろう。悪人ならばこうして治療してやること、人間ならばあり得ないと思うが、どうやら『闇医者』という通り、ヤクモの方も法外な治療代を請求して、それなりに儲けて収益を得ている様子だ。人間界でいう所のギブアンドテイク。内心、汚らわしいと思わない事はないが、その金でヤクモは、自身の身の回りの生活と、子供たちの世話をしてやっているのだ。ただ、汚らわしいだけではない事、世間知らずのエルメールにも何となくは伝わった。思って目を細め、売人の方を睨んでいると、さっきからどうもチラチラとエルメールの方を伺い見ていた売人が『へへ』といやらしい下卑た笑みを向けてくる。 「に、しても先生……キレーな兄ちゃん囲ってるじゃねえか、」 「そいつは俺の、新しい助手だ。ジロジロ見んな」 「絹みてぇな金髪に、真っ白い肌、こいつぁ上物だぜ。どうだい先生? 俺に任せてくれりゃ良いように……」 「うるせえぞ。俺は人身売買はしねーって何度も言ってるだろ、下衆野郎」 「……え」  確かに出会った当初、ヤクモはやはり『俺は人身売買はしねえ』と言っていた。が、ヤクモは普段、エルメールにすぐ『売り飛ばされてーのか』と脅し文句を言ってくるから、売人の視線から庇うようにエルメールを、自身の背中に隠したヤクモを意外に思う。『へっ、そうかよ』と売人はすぐに諦めたような言葉を返したが、診療室を出て行く際も、名残惜しげにエルメールの方を、ちらりちらりと眺めていた。 「……お前の金髪、目立って仕方ねぇな」 「天使たる証の、僕のお気に入りです。何か文句でも?」  客を帰らせエルメールに茶を淹れさせて、診療机に座ってヤクモはズズズとお茶を飲みながら、エルメールのポニーテールを手にとって弄くる。ふふん、と鼻を鳴らして誇らしげに胸を張るエルメールであったが、さっきの売人がそうであったように、こんなに美しくてはヤクモの目の届かないところで、売人共に狙われかねない。しかし、助手と言うくらいだ。ヤクモだってエルメールに、一人で買いだしくらいには行けるようになって欲しいもの。考えているとふと思い付いて、診療室の裏の居住スペースのクローゼットを開けに行って、ごそごそバタンバタンと、ヤクモはそこを漁り始めた。ひよこのようにひょこひょこヤクモの後を付いて回るエルメールが、ヤクモの後ろで腕を組んで、不審そうに身を屈めたヤクモの背中を眺める。 「何を突然、クローゼットを漁り始めたんです? 後片付けするの、僕なんですからね」 「……あった。ほら、エル、それでも被ってみろ」  エルメールの文句を無視してヤクモは何かをもって立ち上がり、それをエルメールに投げて寄越す。『わ』と言ってエルメールはそれを受け取って、その、後頭部部分が大きめの、麻で出来たキャスケット帽をマジマジと眺める。 「なんですか、これ」 「帽子だ。しらねーのか? それ被ってお前の目立つ金髪、後ろに仕舞ってみろ」 「はあ……被る?」  案外不器用で物知らずなエルメールが首を傾げて帽子を眺めているのに苛々して、ヤクモが手ずからそれをエルメールの頭にぼふっと被せて、それからエルメールに後ろを向かせて、長い金のポニーテールを、キャスケット部分に収納してやった。前髪は横に流しているエルメールだ。良くみればそこが金である事は解かるが、この街にだって髪を染めている者くらいはいる。美しい髪の根元やその全容を見なければ、ただ前髪を金に染めた、美しい青年だ。程度には収まるだろう。エルメールは『ほれ』といって鏡の前に連れてこられて帽子を被った自身の姿を見せられては『なんてこと!』とシクシク嘆く。 「僕の自慢の……神に愛された金色が! これではまるで、僕の品が解からない者にはただの人間じゃないですか!!」 「人間に見えるように、業としてやったんだっつの。お前、あんまり綺麗な面と髪晒してると、いつまでも一人で出かけられねえだろ」 「えっ……僕に、この、薄汚れた街を一人で歩けと? 僕を見捨てる気ですかヤクモ!!」 「ちっげーよ! お前、ここの助手っつう事にしてんだから、生活用品のお使いくらいしねーと不自然だろうが!!」 「はっ、そ、それもそうですね……しかし僕、」  先ほどの売人の、いやらしい目つきを思い出してはぶるりと震える。不安になって顔を青くしていると『心配ねぇ』とヤクモが珍しく、帽子の上から優しくエルメールの頭を撫でてきた。 「すぐそこの、野菜市まで三分歩くだけだ。ここいらは俺の縄張りみてぇなもんだから、野郎共に口利きだってしておくし、治安もそれほど悪くはねぇ」 「縄張り……? ヤクモ、あなた何者ですか」 「ハッ、ただのケチな闇医者だよ」  言ってその日は診療所を閉めて、人間界の空気に疲れたエルメールを自身のベッドに寝かせると、ヤクモは『口利き』とやらをしに、夜の街へと出かけて行った。 ***  次の日早速、エルメールは買い足してもらった専用の私服に薄手のコートを身に纏い、帽子を被ってヤクモに髪を収納してもらっては、食事の『お使い』、ヤクモ無しでの買出しへと出かける事になった。エルメールは終始不安げで、そわそわと診療室をうろうろしてはヤクモをチラチラ見つめ、そうしているうちにいつもの子供たち三人が、『エル兄!』と(子供達には)優しいエルメールを、迎えに来たのであった。 「おや、君達は先日の……」 「先生から聞いたよ? お使いに行くんでしょ。ボク達も付いてってあげる」 「なんと、」 「最初から一人きりじゃ、てめぇもブルって漏らしかねないだろ。ガキ共呼んでやったから、市場で買い物ついでに、余った小遣いをガキ共にくれてやって来い」 「漏らす? 僕はだって、排泄行為なんかしませんけど」 「エル兄、強がっちゃってぇ! 良いからボク達に付いて来なってば、」 「あっ、ちょ、ちょっとキミ達っ……や、ヤクモ!!?」  子供達に腕を引っ張られて、エルメールは診療室から外へ連れ出されて行った。巻き煙草を吸いながら、ヤクモはそれを、いつも通りの前髪に隠れた鋭い視線で見送る。開けっぱなしの扉から、人間に扮したエルメールと子供達の姿が曲がり角に消える頃、その曲がり角の反対側からにゅっと、アッシュグレーの短髪にピアスだらけの顔の青年、ヤクモの幼馴染のセンジュが顔を出して手を上げた。 「よーお、ヤクモちーん?」 「気味悪ぃ呼び方やめろ、センジュ」  舌打ちして煙草を灰皿に押し付けているうち、素早くセンジュが診療室に歩み入ってくる。ここらの人間にしては小奇麗にしている、だから付き合いを続けているセンジュだ。そのセンジュがニマニマとして、ヤクモの周りをくるりと一周、じとっと白衣に包まれたヤクモの身体全体をいやらしい目で眺めてくる。 「なんだ、何の用だよ」 「いやあ、お前が遂に、男の相手に目覚めたって知ってからな? 俺、体が疼いて仕方ねーんだわ」 「はあ? ふざけんな。エルのやつは特別だ」 「それはどうかな? なぁヤクモ、丁度エルメールが留守なんだ。俺とも試してみようぜ」 「腐れ縁同士で気色悪いだろうが、呆れた冗談だ」 「気色悪いか、はっ!」  次の瞬間、腕っ節の強いセンジュだ。特別決まった仕事はしていないが、腕っ節だけでこの街を生きているセンジュに、ヤクモは引きこもってばかりで細りつつある身体をドサッと、診療ベッドに押し倒されて『くっ』と声をあげる。 「試してみてからぁ、決めようぜぇ?」 「オイッ、正気か?」  乾いた笑いでもってそう言っても、元々両刀使いのセンジュはごそごそと、ヤクモのズボンからヤクモの見事な性器を取り出しては、それを握って頬擦りをする。 「ハァ♡ いつみても立派なブツだぜ……フェラしてやるから、お前もその気になれって」 「お、とこの、フェラなんかでおっ勃てて、たまる、かっっ……!」  パク、じゅる。言ったものの、センジュは伊達に数多の男の相手をしていない。ペニスを深くズッポリ咥えたかと思うと、ずるっと先端まで抜き取って手で竿を擦りながら、舌を尖らせヤクモの尿道口をぐりぐりと苛めてくる。そうもされると、相手は幼馴染の男だっていうのに、ヤクモだって生理現象で、性器を思わず勃起させてしまう。別に、毎日エルメールを抱いている……欲求不満でもないってのに、とヤクモは自分の性欲に呆れたが、ここまできて、途中で止められるのも惜しい。仕方が無くその身を委ねて、いや、センジュの短い髪の毛を引っつかんで余裕気に先端をぺちゃぺちゃ舐めているセンジュの頭を、グポッと思いっきり、ペニスが喉の奥まで届くように下に押し込んで下ろしてやった。 「おごっっ♡♡」  嬉しげに苦しげに、その気になったヤクモに気がついてセンジュが下品な声をあげる。センジュの喉奥に、当たっている。コレはなかなか、控えめな女にはできない所業だ。と、ヤクモは内心笑って、それから両手でセンジュの頭を掴んで、センジュ主導のフェラから一転、イラマチオを開始する。ずぷっ、ずぷっ、と激しくセンジュの頭を揺さぶって、いいように自身の凶悪なペニスを刺激する。 「てめぇ、センジュ、お前が仕掛けてきたんだからな? セキニンとれ、よっと、」 「ふっ、ふぐぅ♡ おっ、ふぁっ……♡♡」 「くっ……」  暫くそうしてヤクモの手で、センジュの口内を好きにしている内、やっとのことでヤクモのペニスはビキ、ビュク、と精液を少し零し始める。 「イッ……くぞ? てめー、折角だから、全部、飲みやがれっっ!!」 「んっ、ぷぁっ! おうっ、飲むっ♡ 飲むぜ♡♡ 全部、全部くれよっっふぐっ!!?」  ドップン、ドク、ドクドクドクッッ!! 別に溜めているわけでもないのに濃厚な精液が、センジュの口内に思いきって放たれた。それをセンジュは、さすが慣れている。こく、こくん。と全部飲みこんで、口元をぐいっと袖で拭っては頭を上げて『はーっ』と満足気に息を吐いた。 「ヤクモ……お前の、想像通り、すっげぇ濃くてにっげぇの♡ かはっww」 「っ、はあ、これで満足したか? だったらさっさと帰れよ、」 「まさか!! これからが本番、だろ? なぁ、ヤクモ……俺に突っ込むのと、突っ込まれるの、どっちがお好みだ?」 「ハッ、ふざけんな、てめぇと一発だなんて、タチでもネコでもお断りだっ……て、」  ガラリ。診療室の扉が開く。 「はぁ、只今戻りまし……っ、え!?」  子供達から解放され、帰ってきたエルメールが帽子を脱いではドサッと食料でいっぱいの紙袋を床に落とし、その青い目で見たのは…… 「や、ヤクモ……と、センジュ、さん、」 「よおw エルメールちゃん、今日もキレーだねぇ?」 「っエル、」  ヤクモをベッドに押し倒すように迫っているセンジュと、性器を丸出しで、そこ(まだ元気である)をセンジュに握られている鋭い目つきのヤクモであって。 「っっあなた達、そ、そそそそういうかんけいでっっ!!?」 「ちげーよエル、これぁ事故だ。つか、事案だ」 「ヤクモ!! センジュさんがいながら、僕に手を出していたんですか!!?」 「ふひっっww こりゃ、修羅場ってやつかね?」 「センジュ笑うなうるせぇ。エル、だからな、これは……」 「ふっ、不潔です! 汚らわしい!! これだから人間は、僕、僕は、」 「エル!」  わなわな震えて涙目になっているエルメールに、ドカッとセンジュを蹴飛ばして性器をしまったヤクモが立ち上がって近づく。『触らないで下さい!!』と騒ぎたてているエルメールの細い手首をガッと掴んで、ヤクモはもう片手でエルメールの顎をぐわし、と掴んで、『なっ』と声をあげたエルメールに、思いっきり、深く濃厚なキスをした。 「ふっ……? んっ、」 「はっ、落ち着け、って……」 「んぁっ、ちゅ、ぷぁ、はぅっ……♡」  ヤクモだって伊達に、数多の女の相手をしていない。キスが上手いのだ。その、高度なテクニックの口付けにエルメールの目はトロンと蕩けて、腰の力がぬけてその場にへたり込みそうになるのを、ヤクモがエルメールの細腰を支えて止める。抱き寄せる。密着してはキスを続ける。  ちゅ♡ ちゅる♡ ちゅく、ちゅく、 「おー、なーんだ。遊びかと思ってたけどヤクモ、お前も結構ホンキっぽいわけか?」  その濃厚なキスの見学人、センジュの言葉にやっと唇を離し(銀の糸が二人を伝った)、ヤクモが柄の悪い細めた目で、前髪に隠れたその目でチラッとセンジュを睨み振り返ってから、片手でエルメールの頭を撫でてやる。 「なぁエル、解かったか。今ぁ俺の相手、お前だけだから安心しろ」 「ふっ♡ ふぁ……ほ、本当、れすか?」 「ああ、さっきのは、センジュの野郎に押し倒されて無理矢理脱がされただけだ、」 「で、でもヤクモ、その、勃起させて……」  と、言った所でキスだけで勃起している、エルメールの股間をズボン越し、ヤクモが握りこむから『ひゃっ』とエルメールは声をあげる。 「ただの生理現象だ。お前だってキスだけで、こんなにしてるだろうが?」 「んっ、こ、これは、だってヤクモ、ヤクモがぁ……」 「……うるせぇ口だ。お使いの『ご褒美』に、抱いてやるからまずはシャワーでも浴びるぞ」 「ふ、ふぁい、ヤクモ……♡」  『あーあ』と興ざめしたセンジュがたち直して膝をポンポンと払って、『くは』と笑って二人の横を通り過ぎて、診療所から出て行く。 「幼馴染は蚊帳の外、ってか、ヤクモ。まぁた、気が向いたら襲いに来るから、覚悟しとけよ?」 「黙って帰れっつうの、エル、シャワー行くぞ」  センジュが去って行った後、本当にお使いのご褒美に(お使い、したものは床に落ちて転げたままだが)、二人はシャワー室へと向かった。

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