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11.スラム街の闇医者と落ちてきた片翼の天使の秘密①
人間界から遠い天界。神の寝床で、その情事は行われていた。
「はっ、はっ、はぁっ♡」
「くっ……私の、可愛い天使、ああ、可愛い、可愛いよ」
「かみっ、神ぃ♡ 好き、好きです神っ」
「ああっ、私も、愛している……ニコラ」
「ふふっ、はぁんっ!? あ゛っっ、ふかいですっ♡」
「お前の全て、私が全身愛してあげるよ、ニコラ」
「……あの、片翼よりも?」
「? 何の話だ、ニコラよ」
「ふふふ、何でもっ……ひんっ♡ あぁ、きもひいぃっ」
少年らしいアルトボイスが、神の御許でそう、響き渡った。
***
「ヤクモ先生……いる?」
天界から落ちてきた片翼の天使、エルメールが居候している人間界の、ヤクモ・スガワラの診療所に、いつもの子供達はやってきた。いつも厚かましいくらいの子供達の、その潮らしい態度にヤクモは眉を潜めて、それからエルメールを伺い見るもやっぱりエルメールは先日のことをすっかり忘れてしまっている様子。そっと扉から三人の子供が中を伺い見ているのに、機嫌よく近づいていっては扉を全開にする。
「やあ子供達、そんな所に隠れてどうしたんです?」
「っ!! エル兄、大丈夫だったの!!?」
「はい? 大丈夫、とは?」
「ヤクモ先生! 俺たちあの日ね、売人に……!!」
「もう良い。あの日はたまたまセンジュの野郎が診療所に来たんだ。エルは大丈夫だから、お前らも忘れろ」
「!! センジュさんが!? あの人根っからの夜型なのに来てくれたんだ、よかったぁ!!」
そこまで言うと子供達が笑顔を取り戻したから、不思議そうにしていたエルメールも笑顔に戻り……かけて、子供達の怪我を見てはハッとする。
「君達、酷い怪我をしているじゃないですか! ヤクモ、診てあげてください、」
「ああ? そりゃ、治りかけの痣だろ。今更処置のしようもねーよ」
「そんな、薄情な闇医者ですね!! ふう、仕方がありません……君達、こっちに座って」
「なーに、エル兄?」
エルメールに指示された通りに子供達三人が、処置用のベッドに並んで座る。それぞれ皆、エルメールのことで売人共に暴力を受けたのだ。その時の痣に、エルメールはふわっと両手をかざして、何事か呟くと辺りが温かい光に包まれた。いつも通りの白衣姿で、巻き煙草を吸っていたヤクモがそれに、『っ、』と言葉を失う。
「……なに? あったかい、あ!?」
「ふう、これでもう大丈夫。君達、もう痛い所はありませんか?」
「痣が、消えてる!? エル兄、なに? 今の何、魔法!!?」
「ふふ、今のは僕が天使たる……いたっ!!?」
ドガッ!! と、ヤクモに背を向けていたエルメールの尻に、ヤクモが思いっきり蹴りを入れたのだ。エルメールが涙目でヤクモを振り返って『何するんですか!!?』と問ったがヤクモはそれは凶悪などす黒い表情をしていたから『ひっ』とエルメールも、子供達も悲鳴を上げる。
「エル、てめぇ。まだ自分の立場が分かってねえようだな? おいガキ共、今のことは忘れろ」
「えっ……ええ、でも、ヤクモ先生、」
「でももだってもねえ! 忘れろっつったら忘れやがれ、他言も無用だぞ!! 返事は?」
「はっ、はい! センセイ!!」
「っし、解かったら散れ。俺ぁエルに用があるんだ、さっさと出てけ」
「はい! シツレーしました!!」
ヤクモのどす黒いオーラに押されて、子供達はそそくさと診療所から出ていった。
***
「ヤ、ヤクモ……何をそんなに怒って……?」
「お前、お前が『天使』だって、今までだって周りには秘密にしてきただろ。何考えてやがる、」
「そ、れは、ヤクモが子供達の処置をしないと言ったから、遂、」
「遂、でお前の特殊が露呈したら溜まったもんじゃねえだろ!! お前にはもう少し、解からせてやらないといけねーみてーだな、っと」
「ひゃっ!?」
診療ベッドの前に立っていたエルメールの足を引っ掛けて、ヤクモはエルメールをベッドに倒れこませる。すぐにその上に覆いかぶさって、エルメールの首筋にがぶりと噛みついては痕を付けて『いたっ』と悲鳴を上げているエルメールを無視して、その下穿きを一気に引き抜いた。エルメールの、美しい桃色の性器が外気に露になる。
「ちょっ、ヤクモ!? 寒いです!!」
「今日もたっぷり躾けてやる、てめぇは俺の言うことを聞いてりゃ良いんだよ」
「そんな言い草、ヤクモ、ヤクモとはいえ人間が、天使たる僕に無礼ですよ!!」
「うるせぇな、いいからヤるぞ」
「って、結局そうなるんですか!? ヤクモは性欲が強すぎます!」
「……そうだな、お前、今日は俺のを咥えろ、おらっ」
「ひっ」
ベッドに押し倒したばかりだというのに、今度は自分がベッドに腰かけては下半身丸出しのエルメールを床に跪かせ、自身のズボンのチャックを開けてはまだ勃起していない凶悪なペニスを晒し、エルメールの後ろ頭を引っつかんでその白い頬に、それをぺちっと押し付ける。
「うぁっ……や、ヤクモのが、」
「お喋りしてねえで、さっさと咥えろよ淫乱」
「う、うう……」
と、呻いてみたが案外素直に、エルメールはヤクモを握りこんで、その先端をペロペロと舌で慰め始めた。淫乱なくせにウブみたいなエルメールの伏せった美しい睫毛に、目元にヤクモは少しだけ興奮して『ハハ』と小さく笑う。
「なぁエル?」
「んっ……ふぁ、ふぁい、」
「お前、俺だけの天使でいろよ。他の奴にその、天使みてーな態度、取るんじゃねえ、っと」
「ふぐっ!!?」
一気にエルメールの頭をじゅぼっ! と、ヤクモのペニスが奥まで入るように押しこんで、それからはエルメールが自ら頭を動かして、最奥まで、先端まで抜いては押し込んでを繰り返すのを、見守る。勿論そうされると勃起するヤクモであるから、先走りもエルメールの口内に零しては、どろどろになったエルメールの口元を軽く拭ってやって、目にハートを浮かばせながら一生懸命にヤクモを味わっているエルメールの頭を撫でてやる。
「良い子だ、エル」
「ふっ、んん゛っっ、んぅっ!! ぷぁっ、ヤクモぉ、ヤクモの味……します♡」
「おっと、休んでいいとは言ってねえぞ? ほら、もっと奥まで咥えろよ」
「ふぁい♡ ん゛っっ!」
ずちゅ、ずちゅ、ずっ、ずっ、ずっ!! 暫くそうしてフェラをして、そのうちヤクモにも限界が来る。エルメールは、『神』とやらに仕込まれているのだろう。フェラが、焦らすのが上手くて何度かイきかけては止まって、ヤクモも『は、は、』と息を上げていた。
「てめっ、いっちょまえにっ、焦らしやがって……」
「ふふっ、ヤクモ、僕のオクチでイきたいれすか?」
「っるせぇな、淫乱天使がっっ!!」
「ぅぐっ♡♡!?」
優しく撫でていたエルメールの頭を、思いっきり、再び奥まで突きあげる。エルメールは前述の通り濁った声をあげて、ドピュ! ビューッ!! と、勢い良く放たれたヤクモの精液を、こく、こくん、と飲みこんでは少し零して、『はぁっ』とペニスから顔を離しては、まだ勃起しているヤクモに顔を寄せて、熱い息を吐く。
「はぁっ♡ ヤクモのせーえき、濃くて甘くておいひぃ♡」
「はっ、馬鹿が。精液が甘いわけねーだろ」
「んっ、でも美味しいんれすぅ……はぁ、ヤクモ、僕、ぼくも……」
言ってモジモジと、ヤクモをフェラしている内に勃起した自身の下半身を捩らせるエルメールに、ヤクモもゴクリと生唾を飲みこんだ。が、その時丁度、ノックもせずにヤクモの診療室に、来客があったのだ。ギィ、と鈍い音を立てて、診療室の扉が開く。
「はぁいヤクモ♡ って、あら、おとりこみ中だった?」
「チッ、イリアか……人んちに入るのに、ノックくらいしやがれ」
「うふふ、ごめんってば。それにしても……あらあらあら、本当に、キレーな男の子ねぇ? おちんちんも、一生懸命勃起して可愛い♡」
「あっ……やっ!! ヤクモ、お知り合いですか……」
ヤクモのペニスから頬を離して、自身の収まらない、疼きっぱなしの下半身を隠しては、ちらりちらちらとヤクモとイリアを順番に見やるエルメール。イリアはそんな二人にも動じずに、むしろずんずんとそのロングドレスを靡かせて近づいてきては、二人の後ろ、ヤクモの診療椅子に腰かけてみせる。ヤクモは再び『チッ』と舌打ちをする。
「こいつぁ俺の腐れ縁で、この街の娼婦のイリアだ。てめー、俺の椅子に勝手に座るんじゃねえよ」
「あらぁ、良いじゃないの。それよりねーえ、あたし、男の子同士のセックスって興味あるのよね……ちょっとやって見せて?」
「はぁ? エルは見世物じゃねーぞ、用がないならさっさと帰れ」
「……見せてくれないと、この前の夕方のこと、そこの子にばらしちゃうわよ?」
「……」
「ヤクモ? この前の夕方って……?」
それはエルメールが売人共に陵辱されている時に、ヤクモがイリアとセックスをしていたことである。それは明白だった。女狐め……とは思ったが、そのことを話して何かの間違いで、エルメールがあの日のことを思い出しては堪らない。そもそもどうしてあんな衝撃を忘れてしまったのかは解からないが、思いだしては可哀想だ。だからヤクモはエルメールを抱えあげて、『っ??』と疑問符を浮かべているエルメールを座っている自身の上に膝立ちにさせて、イリアにエルメールの背を向けさせてはエルメールに次のように命令した。
「エル、お前、今日は自分で腰落とせ」
「えっ!!?」
「対面座位って奴だ、お前も大好きな俺のカオ、見ながらヤるの好きだろうが」
「や、ヤクモ!? 女性が見ていますっっ」
「イリアが見たがってるんだ、少しくらいサービスしてやっても良いだろ?」
「さっき、ついさっきヤクモ、俺だけのなんとか……って、ひぃっ!!?」
ぐちゅ、と既に興奮して、愛液に濡れていたエルメールのアナルに一気に二本、ヤクモが指を突っ込んだのだ。『わ♡』とイリアが喜んで、くぱ、とヤクモが拡げたエルメールの柔らかいアナルに釘付けになっている。それから有無を言わさずぐちゅぐちゅと、ヤクモはエルメールに自身が入るように、サービスでそこを拡げてやる。されているエルメールは早くもまた瞳にハートマークを浮かべてはだらしなく口を半開きにして、ヤクモの頭にしがみ付いてはふりふりと白く美しい尻を振る。
「あぁっ、うぁっ♡ ヤクモ、ヤクモぉ♡ 女性が見てっ、る、のにぃっ……」
「見られてるから、余計にこんなぐちょぐちょにしてるんじゃねえのか、エル」
「はぁんっ♡ 拡がる、僕のおしり、拡がっちゃいますぅっ」
「あぁ、そうだなァ? ほらっ、」
「あんっ♡?」
ちゅぽっ、と指を抜いてはヤクモは、しがみ付いて来ていたエルメールの顔を自分の顔に至近距離、近づけてやっては前髪の下の目をぎらつかせ、熱く囁く。
「挿れろよ、淫乱、」
「っっーーーーー!!」
「どうした? お前の大好きな俺のちんぽが、ギンギンになってエルのナカに入りたがってるぞ?」
「あっ、あっ……ヤク、モぉ、ね、あの……挿れます、挿れます、から……その、」
ぷちゅ。エルメールが片手でヤクモのペニスを支えては少しだけ腰を落としてアナルにディープキスさせる。エルメールはもうハートを飛ばしっぱなしでヤクモに首っ丈で、ヤクモから一時たりとも目を離さずに、誘うようにもう片手をその唇に当てて、甘く、甘く囁いた。
「キス、してください、ヤクモ……?」
「っっ、チッ、淫乱の癖に清純ぶりやがって」
そうはいったがヤクモだって、実はエルメールに結構ご執心なのである。ちらっと喜んで二人を見ているイリアを一瞥してから、ちゅう、と顔を傾けては深く、深く口付けて舌を絡める。ちゅる。そうすると『ふっ♡』と息を吐いたエルメールが少しずつ、口付けをしたまま少しずつその腰を、ヤクモのペニスに落としていく。ズル、ず、ズズ。
「わぁ、すっごい……本当に、あのヤクモが、男の子のお尻に挿ってる!」
「んっ、んっ、ちゅぱ、んっ♡♡」
空気を読まないイリアの台詞が角に立つが、そうしてエルメールが全て、深い所まで挿入して、ヤクモの睾丸にキスしたところでヤクモはキスやめ、エルメールに囁きかけた。
「良い子だな、エル。後は……言わなくても解かるだろ」
「ひゃいっ、はいぃっ、ぼく、僕がっ、自分で、お尻でヤクモのおちんちん、ズポズポします、ぅっっ♡」
「おらっ、動けっ!!」
「ひあ゛っっ!! あっ、あ、ふぁっ♡♡」
自分で腰を上げ下ろしして、そのうち我慢の利かなくなったヤクモも下から突きあげて、二人は本格的に男同士のセックスに溺れる。イリアはここまで来ると言葉を失って、しかし興奮して鼻息を荒くしては、自分が童貞を奪ったヤクモの、成長した姿に見入っている。
ずんっ、ずんっ、ずちゅ、ずちゅっ、ずちゅっ♡
「あっ、あ゛っっ♡ もっとぉ! ヤクモっ、もっと奥ついてぇっっ!!?」
「くっ、はっ、はっ、エルっ、エル、もっと腰、揺らせっ!!」
「ふぁっ、あ、ああ、ああぁっ、イくっっ、ヤクモっ、僕、イきますぅっっ!!」
「あァ、イっちまえ! だらしなく舌出して、蕩けきった顔でザーメンぶっぱなせよっ!!」
「ヤクモっ、ヤクモッ♡♡ 好きっ、しゅきぃっ……♡♡ ん゛っっ!!?」
「ぐっ!?」
どぴゅっ、ピューっ!! エルメールの精液が、ヤクモの白衣の中の黒服に飛び散って、ギュウウ、とアナルを絞めたエルメールだったがヤクモは容赦なくまだ突きあげる。
「あっ、あひっ!? やっ、クモ、イってる、いまイってまひゅからぁっ♡♡」
「っるせぇ! 俺はまだイってねーんだよっっ、くっ!!」
ぴゅる、ぴゅるぴゅる、とエルメールはイキっぱなしで突き上げられて、先ほどヤクモに言われた通り、だらしなく口を開けて舌を出して、『はっ、はっ、はぁんっ♡』と声をあげている。そうしてほんの少しして、ヤクモも本当に限界が来て、ビキビキ、と血管を浮かばせたペニスからエルメールの体内に、
ドプンッドクドクッッ、ぴゅる!!
と、精液を注ぎ込んだのであった。
***
挿入しっぱなしでエルメールはヤクモにしがみ付いていて、ハァハァと息を荒げて静止している。ヤクモも一度『ふぅっ』と息を吐いてはエルメールを抱き寄せて美しい金髪を撫でてやって、それからジロリと興奮して口元を抑えている、エルメールの後ろのイリアを睨んでやった。
「ほら、これで満足か、イリア」
「はっ、アハッ。あんた達、はっげしぃーてか、ラブラブってやつ??? あたしも参っちゃった♡」
「っ、はぁ、は、ヤクモ、ヤクモ……キス、キスして、」
「ちょっと待てって、エル。イリア、満足したなら退散しろ。俺等はまだ、続きすっからな」
「えっっ!!? そんなにヤってまだする元気あんの? ヤクモってばぜっつりーん」
「茶化すな、ほら、」
しっしと手を振って、ヤクモは座っていたイリアを立ち上がらせて診療室から退室させる。エルメールはそんなイリアをぽうっとした頭のままで見送って、しかしその後にすぐ再開されたピストンに、また乱れ喘いでは第二ラウンドに溺れたのであった。
***
そんな二人を天界から、渋い顔で眺めている黒髪の天使がいた。
「エルメール……呑気に人間なんかと、幸せぶりやがって、」
少年らしいアルトボイスが美しい、ニコラである。ニコラは現在エルメールに代わって神の寵愛を受けている大天使で、そうしてエルメールの、片翼をもぎ取った張本人なのだ。
「神はもう、カンタンに僕の物になっちゃったしぃ……つまんないから人間界に降りてって、次はあの人間を、僕のモノにしちゃおっかなぁ?」
ニコラは彼が生まれ出でた時から神に寵愛されていたエルメールを疎んでおり、憎んでおり、更に言うなれば執着している。愛憎に似たエルメールへのその感情は、天使と言うには濁りすぎていて、
「エルメール。次はお前のもう片翼も、お前の愛した人間も、この僕が一緒にもぎ取ってあげるからね」
そういってはケタケタと笑い声をあげて、寝室に戻ってきた『神』に、『どうした、ニコラ』と声をかけられ人間界を覗いていた、手元の水晶をスッと虚空に隠したのであった。
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