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第2話
実家の台所で朝食の支度をする愛音。
先に作った味噌汁のいい匂いもダイニングまで漂っていく。
熱せられたフライパンに卵を二つ落とすと、すぐさまそこに水を足して、蓋をして、パチパチとさっきまで生だった卵が目玉焼きになっていく音がする。
一点を見つめ固まっている愛音。
その間にもみるみる目玉焼きから焦げた臭いがあがるが、愛音はまだその火を消さない。
「ちょっとちょっと!兄貴、それもういいんじゃない?!」
そう愛音に忠告したのは、今ようやく起きてきたばかりの双子の弟、叶音だ。
二卵性の双子で、愛音とは顔付きも背格好も異なる。
「うわっ!あっ、ヤバっ!アッチ…!」
被せていた蓋を急いで取ったら、熱くて取り落とした。
あわててガスの火も止めた。
わたわたしている愛音の隣から、パチンと換気扇のスイッチを押す音がした。
「なにやってんの~?」
少し呆れ気味に愛音の隣までやって来た叶音が、換気扇のスイッチを押し、床に落ちたフライパンの蓋を拾い上げて言った。
「…ごめん。」
「めっちゃ堅焼き」
フライパンの中の目玉焼きを覗いて、黄身は半熟を好む叶音は苦笑いした。
はあ…とため息をつくふたり。
「なんかあった?最近ため息多いよ、兄貴。」
白身は濃い茶色のパリパリになり、見るからに堅い黄身の目玉焼きを皿によそって、自分の分のご飯と味噌汁もよそいながら叶音が愛音に聞いた。
「あのさ、兄貴の憂鬱、地味に俺にも移るんだよね~。」
「…うん…ごめん。」
下を向いてやっぱりため息をつく愛音を横目に、お盆に乗せたそれらを持ってダイニングテーブルについた叶音は、がつがつと出勤前の朝食を食べ始める。
下を向いたまま、ごめんと謝るだけの愛音。
頭の中はぐるぐると何かについて真剣に考えているんだろうと、二卵性だが双子の叶音にも伝わってくる。
「ーー…千乃さんとなんかあった?…最近夜も家に居るし」
叶音の、"千乃"と言う言葉にドキリと一瞬また、背筋が強張る愛音。
食べ終え、お盆とまた流しに戻ってきた叶音は、起きてきた時から変わらずそこに居る愛音を覗き見た。
「ごめん叶音…今日弁当、コンビニでいい…?」
先程の問いに、チラリと叶音を見た愛音から戻ってきた返事は、今日も弁当を作る気が無いというものだった。
「…」
いつまでコンビニ弁当が続くのか…と、叶音は今日も弁当が無いことにため息混じりで肩を落として、仕事に行くため愛音のそばを離れダイニングを後にした。
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