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欲しがりな彼 15

かなり走って自宅に戻った。まだ東城は来ていなかった。 部屋の中で荒い息を抑えようとしていると、東城が鍵をあけて入ったきた。 はあはあと肩で息をしている広瀬に当たり前だが驚いている。「どうしたんだ?」 広瀬は息が切れて話ができないが、東城を振り向いてみた。 「なにか、あったのか?」と聞かれた。 広瀬は、首を横に振った。「なんでもありません」と詰まる息の中いうと、東城を避けて浴室に入った。シャワーを浴びて温まりたかった。そして、先ほど隆平にふれられたところを洗い流してしまいたかった。 浴室からでると、東城が戸惑った様子で先ほどと同じ位置に立っている。「どうしたんだよ?」と聞いてくる。 「ちょっと、走りたくなって」 「うそだろ」 「ほんとうです」広瀬は言い張った。隆平の話はしなかった。 東城は当惑し疑っていたが、追求はしてこなかった。この前のことがあるから、当面は無理やり口を開かせることはしないだろう。 広瀬はキッチンのテーブルに夕食が並んでいるのを見た。そういえば食事中だった。ご飯も、箸も、食べかけのままだ。しかも、冷めてしまっている。広瀬はレンジに皿を入れる。ブーンという音とともにレンジの中で皿が回っている。その様子をじっとみて、自分を落ち着かせようとした。 大量の野菜炒めを口にはこんでいると、東城がシャワーから出てきた。自分で買ってきたビールを開け、食事をしている広瀬を見下ろしてくる。 「食事中に突然走りたくなったのか?」と聞いてくる。「なんかヤバイもの飯に入れてるんじゃないだろうな。ハイになるものとか?」 広瀬は答えなかった。 しばらく沈黙が流れた。わざと夕食を食べる行為に没頭していると、東城がつぶやいた。 「時々うらやましくなるよ。好きなときにしゃべって、好きなときに黙っていられて」そして、キッチンの小さいテーブルの前にパソコン机から椅子をもってきて、正面に座った。「走るのも走らないのもお前の自由だけどさ」と言われた。 広瀬は、唐揚げを口に入れながら東城に聞いた。 「食べますか?」 「いや、いい。こんな時間に食べたら太る。いつも思うけど、お前、こんなに食べてなんで太らないんだ?」 広瀬は野菜の山を示した。 「こんなに葉っぱばっか食ってたら、牛か羊になる」と東城はわからないことを言った。 彼は静かになって広瀬が食事をするのをじっとみていた。

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