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知っていた男 8
数日後、宮田は広瀬と一緒に最近起こった傷害事件の裏づけのため、聞き込みをしていた。まだ寒いがそろそろ春になってもよさそうな日差しになってきている。
日が落ちる時間もだんだんに長くなりつつあった。宮田の運転する車の助手席で広瀬は丁寧に記録をとっていた。
大井戸署の駐車場に車を入れると、見慣れない車が停まっていた。中に二人座っている。1人は東城で、もう1人は知らない男だった。
宮田たちの車が入ってきたのが見えたのだろう。東城がでてきた。もう1人の男もでてくる。東城よりやや背が低く痩せ型の目元のすっきりした同年代の男だった。警察関係者なのは様子で明らかだったが大井戸署の人間ではなかった。パリッとした仕立てのよさそうなスーツとコートをきていた。
彼は、同じく車から出た宮田と広瀬に軽く会釈してきた。そして、親しげに東城の肩をたたき何かをいって再び車にもどった。車が音もなくスタートしでていった。東城は黙ってそれを見ていた。
珍しく表情がこわばっていて顔色が悪い。
「東城さん」と宮田が呼びかけた。「誰ですか?」
東城は宮田の方をむいた。後ろにいる広瀬にも目をやる。悪い夢から覚めたような顔をした。
彼はいつもどおりの笑顔になった。「今、戻りか?どうだった?」と逆に聞いてきた。
宮田はその日のことを東城に説明した。そしてそのまま車の男が誰なのかを聞きそびれてしまった。
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