翠理は今年十四になるが、まだ性分化の兆候は見られない。 これはかなり遅い方で、藍星も最近、さすがにちょっと心配しているようだった。 　フラッフィは産まれた時は性別がなく、十才くらいで性分化するが、必ずオスになる。 メスのフラッフィが現れない理由は、ふたつ考えられていた。 ひとつは、オスのほうが身体能力が高いこと。 もうひとつは、フラッフィはオスでも妊娠と出産が可能だから、逆に種付けの機能を持たないメスが必要なかったこと。 　さらに言えば、フラッフィは性分化によって容姿や性格の特徴が変わることはない。 愛くるしいうさぎ耳もしっぽもそのままだし、美しい容貌もそのままで、ロトゥンにあるような性差は一切持たなかった。 だからメスは劣等種となって退化した可能性もある。 　フラッフィは寿命が平均二十年と短いが、成熟期である十五才からは見た目がほぼ変化しないという不老に近い特性も合わせ持つ。 寿命がくると、唐突に弱り始めて美しい姿のまま亡くなってゆく。