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第10話

1ー10 王は、あなたをご所望でございます。 2人の男たちは、部屋にある風呂場に俺を抱き抱えるようにして連れていくと俺を陶器の湯船につけた。 そして、2人して俺の体を洗い始めた。 風呂になんて入ったことなんて、数えるほどしかない俺の体は、湯のぬくもりに解されてくったりとなっていた。 男たちは、何度か風呂の湯を入れ換えながら俺の体を洗い清めていった。 すると、俺の肌は、つるつるのぴかぴかに磨きあげられていった。 「滑らかな肌でございますね」 男たちがうっとりと俺の体を見つめていた。 それから、彼らは、俺を台座の上に寝かせると俺の全身にオイルを塗り込めていった。 2人の手に全身を揉み解されて俺は、心地よさに眠り込みそうになってしまった。 それが終わると2人は、俺を衣装部屋らしい部屋へと連れていった。 そして、男たちは、てきぱきと俺に選んだ衣装を着せていった。 それは、白い蝶の羽のように薄くて軽い衣だった。 「下履きは?」 俺が問うと、男たちは、うっそりと笑った。 「ここでは、下履きをつけることは許されてはおりません」 マジかよ? 男たちは、俺を大きな姿見の前に座らせると俺の黒い髪をブラシですき始めた。 俺の髪は、黒くてこの国じゃ珍しい。 だから、ライナスの命令で俺は、髪を伸ばしている。 それは、美しさとかのためではない。 髪を伸ばしてそれを売るために、ライナスは、俺に髪を伸ばさせていたのだ。 その赤毛の男は、俺の髪にいい香りのする油を塗り櫛ですきながら、鏡越しに俺を見つめて溜め息をついた。 「お美しい。この黒髪は、まるで夜のとばりのように艷めいておりますね、イガー様」 「それほどのもんじゃ」 俺は、戸惑っていた。 この連中の目的が理解できなかった。 だって、そうだろ? こんなとうのたった男娼を捕まえてきて、こんな至れり尽くせりだ。 「・・俺は、どうなるんだ?」 俺は、男たちにきいた。 男たちは、俺に優しく微笑みかけた。 「あなた様は、これから王の後宮にお仕えされるのです」 「俺が王様の後宮に?」 俺は、驚きを隠せなかった。 俺みたいな下町の安い男娼が、俺様の側室に? いつも乱暴な冒険者崩れの労働者たちに好きなようにされてるこの俺が王様の後宮にお仕えするんだって? 「なんかの間違えじゃ?」 「いえ」 男たちは、俺にひざまづいた。 「王は、あなた様をご所望でございます。イガー様」

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