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第11話
1ー11 俺の価値
それから男たちは、俺を部屋の一室にある食堂へと案内すると俺に食事をとらせてくれた。
「さあ、お召し上がりください」
といってもなぁ。
俺は、溜め息をついた。
そこに出されている食事は、見たこともないような野菜のサラダやら、濃厚なスープやら、ふわふわの柔らかいパンやら。
とにかく、そういうものばかりだった。
肉やら、香りの強いものはなかった。
「俺、肉も好きなんだけど」
俺が言うと、2人は、意味ありげに微笑んだ。
「ここでは、匂いのきついものは供されません」
なんで?
そう訊ねようとして、俺は、口を閉じた。
そういえば、前にライナスに聞いたことがあった。
高級男娼たちは、匂いのきついものは食べないのだと。
なんでも体臭がきつくなるのを避けるためだとか。
マジで、こいつら、俺を王様の側室にするつもりなのか?
物好きにもほどがある。
食事の後、俺は、ソファに座ってお茶をすすめられた。
いい香りのする甘いおちゃだ。
「これから、あなた様は、王の側室として王にお仕えしていただきます。その上でいくつか、確かめさせていただきたいことがございます」
「なんだよ?」
俺は、横柄な態度で2人に訊ねた。
「確かめたいことなんて、もう全部、あんたたちが調べたんじゃないの?」
「あれでは、調べられないことでございます」
茶髪の男が淡々と続けた。
「あなた様は、性は、ベータでございますか?」
「ああ、そうだよ」
俺が答えると、2人は、ちらりとお互いの顔を見ていた。
しばらくして、赤毛が俺にきいた。
「本当に?」
「ああ」
俺は、答えた。
「正真正銘、ただのベータだよ」
「失礼いたしました」
赤毛が俺に笑みを浮かべて見せた。
「少し、小柄であられるし、あまりにもお美しいものですから、てっきりオメガかと思っておりました」
マジかよ。
俺は、せせら笑った。
「どうする?ベータなんて囲っても意味ないぜ?」
「それでも」
2人は、俺に答えた。
「王は、あなた様をご所望なのでございます」
「王様は、変わってるんだな」
俺は、にやっと笑った。
「ベータの男娼を囲うなんて、どうかしてるぜ」
「我々には、王が特に変わっておられるとは思えませんが」
茶髪の男がにっこりと微笑んだ。
「あなた様には、それだけの価値があると存じます」
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