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第18話

2ー6 アルファの務めとオメガの宿命 俺が王宮で初めてあいつに抱かれた翌日から、王の贈り物攻勢が始まった。 まず、見たこともないぐらい美しく、手触りのいい布を送られた。 次に、赤い魔石の嵌め込まれたきらびやかな宝石の類い。 「このアリスティアは、魔石の鉱山がたくさんございますから」 クレイが俺に語った。 「ですが、この魔石は、格別に美しいものです」 美しいということは、価値も高いということだ。 俺は、最初、王からの贈り物を喜んで受け取っていた。 いつまでもここにいられる訳じゃない。 なら、こういった金目のものを貰うのも悪くない。 だが、この広い部屋が贈り物の箱で足の踏み場もなくなってくると、俺は、だんだん不安になってきていた。 俺は、ラウスたちに頼んだ。 「もう、贈り物はいらないと王に伝えてほしい」 「しかし、王のお気持ちを無下にすることは許されることではありません」 クレイは、俺を諭すように話した。 「それに、王の贈り物を断ることは、他の側室たちの手前、お止めになる方がよろしいのではないかと」 他の側室ときいて、俺は、ここに来た日のことを思い出していた。 何人かの美しい少年たち。 おそらくオメガの。 俺は、なんだかムカついていた。 あいつは、俺のもとに来ないときは、あの連中のところに通っているのか? そう思うと、腹立ちと同時に、不思議に胸が痛んだ。 いつか、あいつは、あの連中の誰かを、いや、何人もを孕ませるのだろう。 それが、アルファの務めであり、オメガの宿命であった。 それは、俺の決して関わることのできないことだ。 俺は、虚しさを感じていた。 俺は、王に抱かれようとも所詮は、ベータ。 何も産み出すことはない。 俺の気持ちを知ってか知らずか、ラウスが俺に嬉しげに微笑んだ。 「今の王には、まだ正室は、おられません。このままセイ様御一人が王の寵愛を受ければ、あるいは、セイ様が正室の座につかれるやも知れません」 「バカなことを」 俺は、ラウスの言葉を鼻で笑った。 「俺は、ただのベータなんだぞ。まともなアルファなら俺なんて、見向きもしないだろう」 そう口に出ししたことは、思っていたよりも俺自身を傷つけていた。 俺は、オメガじゃない。 だから。 エドにも捨てられた。 神殿を追われるとき、申し訳なさそうな顔をしたエド。 『もしも、お前がオメガなら』 そう、エドは、言ったんだ。 俺がオメガなら。 俺は、思っても仕方のないことを考えていた。 エドは、俺を手放すことがなかったのだろうか?

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