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第23話

2ー11 お近づきの印 「セイ様!」 ドアの外で待っていたラウスとクレイが俺に駆け寄ってきた。 「よくご無事で!」 「無事じゃねぇよ!」 俺は、抱いていた子猫を2人に渡した。 「こいつ、俺が飼うことにしたから」 「はい?」 2人が目を丸くして俺を見た。 「しかし、これは、カレイラ様の従魔では?」 「いいんだよ」 俺は、にやっと笑った。 「これからは、俺の飼い猫だ」 俺がカレイラのお茶会から無事に戻った上に、奴の従魔まで自分のものにしたということは、あっという間に後宮中に広まっていった。 「セイ様」 ラウスが俺のもとへ贈り物の箱を持ってきたので、俺は、眉をひそめた。 「またか・・・」 「それが、王からの贈り物ではございません」 「はい?」 俺に贈り物をしようなんて奇特な人物があいつの他にいるっていうのか? 俺は、その美しい布に何重にもくるまれた小さな箱を手にとった。 布をほどいていくとなんの変哲もないただの小さな木箱が1つ出てきた。 「イェイガー?」 『大丈夫だ。何も仕掛けはないようだ』 俺は、ラウスに訊ねた。 「これは?」 「これは、セイ様と同じ側室のイェイリ様から届けられたものでございます」 「同じ側室の?」 「はい」 ラウスが満面の笑みを浮かべた。 「これは、お近づきの印とのことでございます」 「お近づき、ねぇ」 俺は、小声でイェイガーに訊ねた。 「イェイガー、どうすればいいと思う?」 『貰っておくがいい』 イェイガーは、答えた。 『今度、その者をお茶にでも招いてやるがいい』 マジか? 『これは、その者よりの貢ぎ物、だ。要するに』 イェイガーは、続けた。 『そやつは、主の軍門に下ると言うておるのだ』 「軍門って」 俺は、笑いながら、小箱を開いた。 その中には、ふかふかの台座に収まった赤い大きな魔石の髪飾りが入っていた。 「これは!」 ラウスが自分のことのように嬉しげに笑った。 「セイ様のお髪によく似合いそうでございますね!」 「うん・・・」 とにかくお高そうな贈り物に俺は、びびっていた。 「こんな高そうなもの受け取れないぞ!」 『よいのだ。価値があるからこそ、意味があるのだ。受け取ってやるがいい』 イェイガーは、事も無げに言った。

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