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第29話
3ー5 深夜の来訪
1人で部屋にこもって、俺は、本を読んでいた。
だが、昼間のことを思い出してしまって、集中できずにいた。
『主は、王のことを愛しているのか?』
唐突にイェイガーにきかれて、俺は、驚いて飛び上がった。
『どうした?』
「いや、なんでもない」
俺は、深呼吸をした。
「なんだって?」
『王を愛しているのか、ときいた』
「そんなまさか!」
俺は、わざとらしく笑って見せた。
「あいつは、ただの金づるだよ。金づる」
『そうなのか?』
イェイガーが俺に問いかけた。
『昼間にあったときのことといい、今といい、てっきり、主は、王のことを愛しているのだとばかり思っておったのだが』
「そんなわけがないだろう?」
俺は、断言した。
「俺とあいつの間にそんな感情はないよ」
『しかし』
イェイガーは、俺になおも言った。
『主が本気でなくとも、向こうは、本気やも知れぬぞ』
「じょ、冗談だろ?」
俺は、かぁっと頬が火照った。
「王が俺みたいな手合いに本気になるわけがない。年増のベータになんて。それに・・」
ダメな理由は、いくらだってあげられる。
俺は、『無印の者』で、親にも捨てられた孤児で、男娼で・・とにかく、あいつが俺なんかに本気になるわけがない。
イェイガーは、俺の主張を静かに聞いていたが、やがて、言葉を発した。
『主には、自分のことがまったく見えてはおらぬ様だな』
はい?
『あまり、現実から目をそらしすぎると幸せにはなれんぞ』
「ああ?」
俺は、イェイガーに低い声で言った。
「これ以上、ばかなことを言うなら、お前なんか、捨てちまうぞ!」
イェイガーは、ぴたりと黙ってしまった。
俺は、その後も、集中できずにいた。
もうそろそろ本を置いて、休もう。
そう思っていたときのことだ。
突然、王の来訪を告げる鈴の音が鳴り響いた。
ええっ?
こんな夜更けに?
俺は、 戸惑っていた。
寝室の扉が開いて、ラウスとクレイが飛び込んできた。
「はやくご用意を!セイ様!」
「でも、俺が呼ばれるとは限らないし」
俺がそっぽを向いていると、2人が声を揃えた。
「あなた以外のどなたにお声がかかるというんです?」
はい?
俺は、2人に寝室から無理矢理連れ出された。2人は、俺が拒む間もなく、服を脱がせると風呂場で沐浴させた。
そして、俺の全身にオイルを塗り込めていく。
もちろん、あそこにも、だ。
「しっかりしめてくださいね、セイ様」
「な、何、言って」
俺は、後孔へとオイルを流し込めれて思わず、そこを食い閉める。
2人は、裸の俺にさらさらの薄い透けた布を巻き付ける。
さすがの俺も、羞恥心を覚えずにはいられないような衣装だ。
「これ、やり過ぎじゃ?」
「やり過ぎですって?」
クレイが含み笑いをする。
「この衣装を望まれたのは、王その人ですよ、セイ様」
マジですか?
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