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第42話
4ー5 宦官
体の奥までっていうことだけじゃない。
魂までということだ。
王に抱かれて初めて、俺は、魂が震えるのを感じたんだ。
魂まで届くぐらい深く抱かれて、俺は、初めて他人と本当の意味で触れ合ったような気がしていた。
だから。
こんな事で王を裏切ってしまったことを、俺は、後悔していた。
俺は、心の底から、殺されてもいいと思っていた。
王の手でなら殺されてもいい。
それどころか。
この心臓を貫かれたい。
それは、妙な高揚感を俺に与えていた。
馬車は、昼夜を問わず、走り続けた。
停まるのは馬を休ませたりするときだけだった。
長距離の旅をしたことのないラウスと俺は、疲れて馬車酔いのために座っていることもやっとでアルテミアさんが差し入れてくれた飲み物や食事も喉を通らなかった。
特に、ラウスは、青ざめて息も絶え絶えになっていた。
俺は、ラウスを馬車の座面に横たわらせ、服をくつろげてやったり、水を飲ませたりと世話を焼いていた。
ラウスは、涙を流して俺に感謝した。
「私ごときのためにこんなにもよくしていただけるなんて」
ラウスは、俺の手を握った。
「私は、この先何が起ころうともあなた様への忠誠を誓います」
いや。
俺は、そんな風に感謝されて困惑していた。
「普段、ラウスたちがしてくれていることに比べれば、こんなことたいしたことじゃないし」
俺は、わざと素っ気ない態度をとった。
「ですが、セイ様。私やクレイは、任務故にセイ様にお仕えしてきたのでございます。しかし、セイ様は、本当の親切から私に優しくしてくださっているのでございますから」
ラウスは、涙ぐんだ。
「こんなことは、後宮に入ってからクレイ以外の者では、初めてでございます」
そうなんだ。
俺は、ラウスとクレイの人生を垣間見たような気がした。
幼い頃に後宮に入り、15才で宦官となったという2人。
どんなに辛い人生だったことか。
きっと、自分達には、お互いしかいないと思っていたのに違いない。
きっと、そう思って生きてきたのだろう。
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