43 / 86

第43話

4ー6 ザナドクス ザナドクスの町にある国境の砦に到着した俺たちは、窓のない、狭苦しい部屋へと通された。 その椅子が2つ置かれただけの部屋で、俺たちは、ずいぶんと長い時間待たされていた。 俺は、ドアに耳をつけて外の様子をうかがったが、物音1つ聞こえなかった。 ドアを開けようとすると、鍵がかかっていて開かない。 どういうこと? 俺は、ドアを叩いた。 「誰か!」 しばらくドアを叩いたりして騒いでいると、足音がきこえて、カチャッと鍵があけられ、ドアが開かれた。 現れたのは、アルテミアさんだった。 俺は、怖い顔をして立っているアルテミアさんをじっと見つめていた。 「セイ様」 アルテミアさんが俺の手を掴まえて外へと俺を連れ出した。 ラウスが慌てて俺の後を追うがアルテミアさんは、扉を閉めて鍵をかけてしまった。 「セイ様!」 ラウスがどんどん、とドアを叩きながら俺の名を呼んだけれど、アルテミアさんは、気に求める様子もなく、俺の手を掴んだまま歩きだした。 アルテミアさんは、黙ったまま俺の手を引いて歩き続ける。 俺は、掴まれた腕が痛かったが、どうすることもできずにただ歩き続けた。 俺たちは、地下へと続く階段を降りていった。 そこには、いくつかの牢が並んでいて、その前に兵士が数人警備のためにか立っていた。 「王は?」 アルテミアさんは、兵士たちに訊ねた。兵士たちの内の1人がアルテミアさんの問いに答えた。 「客人の牢の方におられます」 「わかった」 アルテミアさんは、俺の手を掴んだまま奥の光の漏れている牢の方へと向かった。 俺は、何が起こっているのかわからず、不安に怯えていた。 アルテミアさんは、牢へと向かう途中で立ち止まると、俺の肩を抱き寄せ、耳元で囁いた。 「心配しなくても大丈夫です、セイ様」 俺は、アルテミアさんを見上げた。 「あなたのことは私が守ります」 アルテミアさんの手が俺の手を包み込んだ。その手の暖かさに、俺の不安は、少しだけましになっていった。 「こちらへ」 アルテミアさんは、俺の手をひいて案内した。

ともだちにシェアしよう!