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第43話
4ー6 ザナドクス
ザナドクスの町にある国境の砦に到着した俺たちは、窓のない、狭苦しい部屋へと通された。
その椅子が2つ置かれただけの部屋で、俺たちは、ずいぶんと長い時間待たされていた。
俺は、ドアに耳をつけて外の様子をうかがったが、物音1つ聞こえなかった。
ドアを開けようとすると、鍵がかかっていて開かない。
どういうこと?
俺は、ドアを叩いた。
「誰か!」
しばらくドアを叩いたりして騒いでいると、足音がきこえて、カチャッと鍵があけられ、ドアが開かれた。
現れたのは、アルテミアさんだった。
俺は、怖い顔をして立っているアルテミアさんをじっと見つめていた。
「セイ様」
アルテミアさんが俺の手を掴まえて外へと俺を連れ出した。
ラウスが慌てて俺の後を追うがアルテミアさんは、扉を閉めて鍵をかけてしまった。
「セイ様!」
ラウスがどんどん、とドアを叩きながら俺の名を呼んだけれど、アルテミアさんは、気に求める様子もなく、俺の手を掴んだまま歩きだした。
アルテミアさんは、黙ったまま俺の手を引いて歩き続ける。
俺は、掴まれた腕が痛かったが、どうすることもできずにただ歩き続けた。
俺たちは、地下へと続く階段を降りていった。
そこには、いくつかの牢が並んでいて、その前に兵士が数人警備のためにか立っていた。
「王は?」
アルテミアさんは、兵士たちに訊ねた。兵士たちの内の1人がアルテミアさんの問いに答えた。
「客人の牢の方におられます」
「わかった」
アルテミアさんは、俺の手を掴んだまま奥の光の漏れている牢の方へと向かった。
俺は、何が起こっているのかわからず、不安に怯えていた。
アルテミアさんは、牢へと向かう途中で立ち止まると、俺の肩を抱き寄せ、耳元で囁いた。
「心配しなくても大丈夫です、セイ様」
俺は、アルテミアさんを見上げた。
「あなたのことは私が守ります」
アルテミアさんの手が俺の手を包み込んだ。その手の暖かさに、俺の不安は、少しだけましになっていった。
「こちらへ」
アルテミアさんは、俺の手をひいて案内した。
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