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第62話
5ー12 旅立ち
「愛して、います」
俺は、王にしがみつきながら王の耳元に向かって言葉を送り込んだ。
「この世界の誰よりも、あなたを愛してしまった」
「セイ」
王が俺をベッドに押し倒して組敷いた。
「やっとお前からそう言ったな、セイ」
王は、俺の首もとへと甘く歯をたてながら俺に向かって睦言を囁いた。
「今まで何度いかせても、何度、追い詰め愛を囁こうとも、頷くことのなかったお前がやっと、その言葉を口にしたか」
王は、俺の中心へともうすでに熱く猛ったものを押し付けた。
「今夜は、無事でいられると思うなよ、セイ」
王は、自分のものを俺自身へと擦り付けながら俺の足を割って押し開いて俺の奥へと指を沿わしてきた。
「ここに、我が精を吐き、お前が孕むまでいかせ続けてやる」
「それは・・無理です」
俺は、正直に答えた。
「俺は、ベータ故にあなたがどんなに俺に情けを注ぎ込もうとも孕んだりしない・・」
「ならば」
王は、俺の頬に口づける。
「どちらかが息絶えるその時まで」
王に押し入られて、俺は、甘い喘ぎを漏らした。
「ぁっ・・あ・・おう、王・・俺の・・」
「セイ」
ずぷん、と王に奥まで串刺しにされて、俺は、涙を溜めて王の胸にしがみついた。
「ぁあっ!王、よ・・あいして・・います」
俺は、夢中で王の動きにあわせて腰をくねらせた。
もっと。
もっと奥までも。
王を迎え入れたい。
王の手が俺の前を掴んだ。
くちゅくちゅという水音がして、俺は、堪らず声をあげた。
「あっ・・あぁっ!そんな・・しちゃ、すぐ、に・・」
「いけ、セイ」
王は、俺の白濁をその手に受け止めた。
「私のもの、だ・・セイ・・お前は、永遠に、王の、私だけのベータ、だ」
激しく最奥を突かれ、俺は、高みへと駆け昇っていく。
「あぁっ・・おれの、おう・・」
王は、その夜、俺が意識を失うまで俺に精を注ぎ続けた。
俺は、翌日、体を清めながら、いつものように俺の中の王の精を掻き出そうとするクレイを止めた。
「今日は、いい」
「しかし、それでは、お体が」
「いいんだ」
少しでも長く王の余韻を体内に残しておきたかった。
俺が湯浴みをしているところへ、カレイラが入ってきた。
欲情したように頬を上気させているカレイラに俺は、訊ねた。
「どうだった?王は」
「それは・・」
カレイラがペロッと舌で唇を舐めた。
「・・私は、寂しかった・・です。セイ」
カレイラが服を脱ぎ捨て湯の中へと入ってきた。
「御二人だけで楽しまれていて、私1人・・自分の手で慰めなくてはならなかったので・・」
「そうか」
俺はカレイラの頭を撫でて目を細めた。
「いい子、だ」
その日、俺は、遠く離れた魔王の国へと旅立った。
供は、クレイとラウス、黒猫のデザスタ、それに影だけだった。
影は、出発の日の朝に俺に前に頼んでいた2つの品を届けてくれた。
それは、澄んだ青い色の魔石の髪飾りと、それと銀色の腕輪だった。
カレイラの瞳と、王の髪の色だ。
それを俺は、アルテミアさんに言付けた。
髪飾りは、カレイラに、腕輪は、王に。
俺が旅立ってから渡して欲しい、と。
「心得ました」
アルテミアさんは、頷いた。
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