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第63話

6ー1 1人ではない。 俺がアリスティア王国を出てから、はや4ヶ月が過ぎた。 トリアニティ王国は、今、連日のようにお祭り騒ぎが続いていた。 それは、かつて王と駆け落ちした異世界人の御子であるユウトの子である俺が異人の国へと嫁ぐことが決まったからだった。 この魔人の国において俺の母である御子ユウトは、伝説的な存在だった。 魔王の眷族である魔人の魔導師たちが召喚したユウトは、かつて魔界よりの瘴気で大地が腐り、国には病が溢れ滅びかけていたこの国とその周辺の国々を救ったのだった。 そのユウトの子であるマナ、こと俺は、王と御子の愛の証とされてもてはやされた。 人々は、王と駆け落ちし人知れず1人で子を産み、死んでいったユウトと、その後、残されたマナの物語に思いをはせて涙していた。 特に、異国の地に1人取り残されたマナが異人に売り飛ばされて奴隷になり、男娼へと身を堕としたにもかかわらず、王に見初められその後宮へと入れられていたが、1人の勇敢な騎士の手で救われ国へと連れ戻されたという話は、今、この国の民たちの涙を誘っていた。 うん。 すごい尾ひれハヒレがついているな。 物語には続きがあり、やっと再会を果たした父王とマナだったが、今度は、異人の王よりの申し込みで異人の国へと嫁ぐことになり親子は泣く泣く引き離されるというものだ。 「酷い誤解というよりも、すでに、悪意を感じられます」 ラウスとクレイは、怒り心頭だった。 「王とセイ様は、お互いに深くひかれあっておられるというのに!」 そうなのか? 俺は、ラウスたちの言葉に最後の夜を思い出して頬が熱くなるのを感じていた。 愛しています。 そんなこと、もう、俺には言えない。 これが最後だと思ったからこそ、言えた言葉だった。 それが、舌の根も乾かぬうちに王のもとへ嫁ぐことになるだって? 信じられない! 「でも、これは、同盟を結ぶために約束されたことであって、ほんとに王が今も俺のことを望んでいるとは限らないんじゃ?」 俺は、1人、呟いた。 すると、イェイガーが答えた。 『もっと己を信じたらどうなのだ?主は、自分も含めて人を信じなさすぎじゃ』 「でも」 俺は、もう、そんな素直に人生を信じることはできなかった。 王は、もしかしたらもう心変わりしているのかも。 こんな俺を誰が必要とする? 俺は、落ち込んでいた。 『元気を出さんか、主よ』 イェイガーは、俺を励ました。 『主は、1人ではないのだから』

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