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第64話
6ー2 ロリア皇太子
不安にさいなまれている俺のことなどどこ吹く風で、トリアニティ王国では、俺をアリスティア王国へと嫁がせる話がどんどん進んでいっていた。
トリアニティ王国国王であり、マナの、というか俺の本当の父親であるトラウト王は、俺を異人の国へと嫁がせることには反対だった。
母であるユウトの面影を残す俺を手元に置いておきたいというのがトラウト王の望みのようだった。
にもかかわらず、俺の結婚話が進められているのは、異人の国との同盟を守るためだけではなかった。
このトリアニティ王国の中には、俺が戻ってきたことをよく思わない人々がいるのだ。
その代表が俺の弟であるロリア皇太子の母であるトラウト王の妃 ロドリスだった。
王の愛した人の子であり、第1子である俺の帰国は、王位継承権の順位を変化させるものだった。
今、この国の王位継承権第一位は、マナ、つまりは俺だった。
そのために、ロドリス1派は、俺をさっさと国外へと嫁がせたかったのだ。
「異人の国で、異人たちによって汚された皇子など、この国には必要ない」
初めて会ったときに、ロドリス妃は、俺にいい放った。
「穢らわしい!」
こんなことなんともないことだ。
俺は、そんな言葉じゃ傷つかない。
そんなこと、今までの人生でいっぱい浴びてきた。
俺が今、心を悩ましていることは、そんな単純なことじゃなかった。
もう、後宮へは、戻るべきじゃない。
後宮にはカレイラもいるし、王の幸福のためには、俺は、後宮へ帰るべきじゃなかった。
そう思う反面、俺の心を占める思いもあった。
王に、もう一度、会いたい。
もう一度、王に抱き締めてもらいたい。
相反する思いに悩む俺は、そのためというわけではないのだろうが、最近体調が思わしくなかった。
「もしかしたら、魔界よりの瘴気が、あなたのお体に悪い影響を与えているのかもしれません」
モルアニティは、俺のことを案じていた。
「長い異国暮らし故、瘴気にあてられておられるのでは」
俺は、体がだるくて、気分が滅入っていた。
食事がとれず、気分も悪かった。
ほとんど毎日をベッドの中で過ごしている俺を、父であるトラウト王と弟であるロリア皇太子は、毎日のように見舞ってくれていた。
ロリア皇太子は、立場上、俺のことをよくは思っていないのかと考えていたのだが、そんなこともないようで、どちらかというと俺のことを好意的に見てくれているようだった。
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